とりあえずの目標は、年に1回実施される試験で合格点を取ること。
別に満点を取りたいわけではなく、合格ラインさえクリアできれば
それで良し、としましょう。
さて、どのように勉強しましょうか。
まずは、傾向を分析してみましょう。
過去、テストで出題された問題を検証してみます。
すると、3桁×3桁、3桁×2桁、という2パターンの問題しか出題されていないことがわかりました。
では次に、対策を考えてみます。
3桁×3桁、3桁×2桁、このパターンしか無いのですから、この2パターンの答を全部暗記してしまえば良い。そうすれば、満点が取れます。
完全ではなくとも、ある程度の割合を覚えれば、合格点くらいは十分に取れるでしょう。
100×100=10000、100×101=10100、…… 999×998=997002、999×999=998001、
100×10=1000、100×11=1100、…… 999×98=97902、999×99=98901
この全パターンを、朝早く起きて、通勤時間を利用して、昼休みの時間を使って、細切れ時間を活用して、夜も時間を取って、休日は図書館に籠って、一所懸命に暗記します。
いつまでにどこまで覚えるか、到達度目標を定めて、日毎に、週ごとに、月毎にチェックして進度を管理します。一度覚えたけれども忘れてしまった部分の復習も念入りに行います。
何度かやっているうちに間違えやすい部分が特定されてくるので、そこは重点的にやります。玄関に、トイレに、鏡に、食器に……。あらゆる目につく所にメモを貼り、せっせと打ち込んだ式を画像にしてスマホに保存して持ち歩き、式画像を常に目に焼き付けながら脳を刺激します。
ネットで同じ試験を受けるメンバーを募り、日々情報交換、到達進度の報告。
自分より進んでいる人がいたら、その人を目標に頑張り、遅れている人や諦めかけている人がいれば励まし、共に合格を勝ち取るために戦おう!
覚えやすい語呂合わせを分かち合って、少しでも効率よく、定着度を高めるように頑張ろう。
さて、試験当日です。
前日に会場の下見はしておいたし、交通機関の下調べもばっちり。栄養と睡眠もしっかり取って、朝早めに起き、試験会場には一番乗り。開場と同時に自分の席につき、精神統一。大丈夫、できることは全部やった、あとは結果を出すのみ。
結果発表。
100点満点のところ、記憶の曖昧だった部分、うっかりミスしてしまった部分、後半疲れてきてしまって力が発揮できなかったことなどもあり、合格点の70点に2点足りない68点しか取ることができませんでした。
非常に惜しかった。しかし、惨敗でも惜しくても不合格は不合格。惜しかったなどと言い訳をしている場合ではありません。事実は受け入れなければなりません。
自分の努力が足りなかった。もっと頑張れたはず。反復練習にもっと時間をかけよう。全パターンを読み上げたものを録音してスマホに入れ、移動時間などに倍速で聴いて脳に刻みつけます。これまでやってきた努力は、決して無駄にはなりません。
人生において、この苦労は必ず糧となります。益にこそなれ、害となることはありません。
早速、来年に向けて学習スケジュールを立てるぞ。
今度こそ、今度こそ合格を勝ち取るぞ。
初受験ですんなり受かった人もいますが、彼はある意味損をしたとも言えるのです。
だって、苦労して努力して頑張って、それでも合格できなかったという貴重な経験を逃してしまったのですから。
とにかく、自分は更に高みを目指して頑張る。やるしかない。
翌年度。
文字通り血反吐を吐くような努力を積み重ねて、試験に臨みました。
しかし、前日に風邪をひいてしまい、体調は最悪。
試験途中でリタイアすることだけは何とか避けましたが、記憶が所々途切れていて結果発表を待つまでもありません。非常に、非常に残念無念。
それでも、諦めません、勝つまでは。努力を怠るつもりなど、毛頭ありません。
結果は、47点。現実を受け入れ、次に目を向けます。
翌々年度。
3年間掛けた努力の集大成を発揮すべき時です。
過去2年間の反省を元に、暗記のための的確な語呂合わせ、到達度チェックに有効な模擬試験、苦手箇所の克服など、前年度にも増してありとあらゆる努力を惜しまずに続けました。
結果、見事合格を勝ち取りました。73点。文句なく合格です。
合格の喜びを前にすれば、3年間の苦労なんて無きに等しいもの。
合格に至るまでに費やした多くの努力、出会った受験仲間は、今後の人生における財産です。
これからは、自分の経験を元に、暗記のための効果的な手法、血反吐を吐いても諦めずにやり遂げるモチベーション維持のための秘訣について、今後の受験生のためにも一肌脱ぐことにしましょう。自分が得たものを人々に分かち合ってこそ、その価値が生きてくるのだから。
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以上は、試験に合格するための方法論の一つとして、『有り』だと思います。
ここまでストイックに取り組み努力できる人格は、素晴らしいもの、賞賛されるべきものと思います。
良し悪しで言うなら『非常に良い』と言って差し支えないかと思います。
けれども、誰にでも推奨できる事かというと、少なくともわたしは推奨しません。
人それぞれ感性やタイプが違うので、この方法が一番合う人もいるのでしょうが、万人にとって相応しいものであるとは思えません。
今回の例は、『掛け算』というかなり限られた領域の試験を題材にしましたから、極端に見えるかもしれません。しかし、いろんな試験に際して、このような取り組み方になっている場合もあるのではないでしょうか。
続きは、次回。
(「試験のための学習方法1」おわり)