これが建ったのは明治21年(1888年)とか。
中央式暖房のボイラーで済ませるなら建物に1ヶ所の煙突で済むのですが、各室の暖房として石炭や木炭を燃やしていたものかどうか、とにかくあちこちに煙突を必要とする建物だったようです。
設備史を紐解いていないのでよくわからないのですが、たぶん当時は汎用性の高い暖房用蒸気ボイラーなんて無かったんじゃないかと思います。
だから各室に煙突が必要で、でも鉄板製の煙突を各室から外壁に出すのは意匠上憚られたのでしょう。
レンガで造って、装飾まで施されています。雨仕舞には苦労したのでは。(勝手な想像です)
15世紀築のヴェルサイユ宮殿なんかも同様ですね。
こういうところに設備と建築の調和を感じます。
「暖炉や煙突はそもそも建築の範疇だろう」というご意見もあろうかと思いますが、「設備」も建築を構成する要素。こんな感じで優雅に取り込むことができたらいいのになと願う次第。
(『煙突』はそもそも、士法で規定している「設備関連規定」の一部ですし)
この隣に建っている庁舎(昔、爆弾テロがあったりしました)も、建った当初は石炭ボイラで空調していたんですね。
年月が過ぎ、今は地域熱供給から高温水を受けて冷暖房を行っています。
高温水で蒸気を作って、その蒸気を吸収式冷凍機に送って冷水を作り、温水は蒸気-温水熱交換器で作って、庁舎内を冷暖房している由。そのため、煙突はその本来の役目を失い、コンクリート製排気ダクトとして使用されているとか。
かように、設備システムは建築形態と密接な関係があります。
(「煙突」おわり)