1.意匠系
意匠設計を主に行っていた人で、一級建築士免許を持っていた人。
手がけた物件の設備部分を「実務経験」として講習を受講し、取得した。
2.機械系
空調・衛生設備設計を主に行っていた人で、一級建築士免許を持っていた人。
実務経験をもとに講習を受講し、取得した。
3.電気系
電気設備設計を主に行っていた人で、一級建築士免許を持っていた人。
実務経験をもとに講習を受講し、取得した。
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たぶん、1の人数が一番多く、3が一番少ないことでしょう。
意匠設計を手がけていた人たちは、法律上、「設備設計の実務経験」があることになっていますから、何の問題も無く講習を受講できるはずです。
まさか、受講者の1割しか通らないような終了考査はしないはずですから、たいていの意匠屋さんは、講習を受ければ取れてしまうはずです。
法が施行されるまでに、ある程度の数の「設備設計一級建築士」をつくらなくてはなりませんから、何度も講習を行って、とにかく数をそろえようとするハズです。
これからは、一定規模以上の建物の確認申請には、設備設計一級建築士の適合証明が必要ですから、それだけでもいいメシのタネになるかと思います。
みなさん、ビジネスチャンスです!
どんどん取得しちゃいましょう!
というか、これが無い場合にはどこかの誰かに金を払って適合証明を作ってもらわなくてはなりませんから、イタい出費になってしまいます。
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2.の人。
「設備」とくくられているけれども、機械系。
電気設備の設計実務経験はあまり無いはずです。
適合証明は、機械も電気も区分がありませんから、両方についての適合証明を出すことになります。
ここで、葛藤が生じるかもしれません。
「電気のことは、専門じゃない。」と。
できれば、「空調・衛生設備だけの適合証明」にとどめたいのではないでしょうか。
「『法律に適合していることの証明』なんだから、そんな難しく考えなくても。」
そう言う向きもあろうかと思いますが、その程度なら、今までの一級建築士で事足りること。
わざわざ「設備一建」を創設した意味とは何なのでしょう、ということになります。
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3.の人。
2.の人と同様。
「電気のことは専門だし、自信を持って証明に名前を書ける。けど、空調はちょっと・・・。」
できれば、「電気設備だけの適合証明」にとどめたいのではないでしょうか。
まあ、そもそも、「電気設備設計を専門としている一級建築士」なる人が、日本中に何人いらっしゃることか。
前宮崎県知事に似た名前の人や都知事に立候補表明した人やドイツ人やフランス人やアメリカ人の建築家にあこがれて建築学科に入学した人たちが、卒業後に電気設備設計の分野をわざわざ選んでそちらに進むとは到底考えられません。
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以上のように、「設備設計一級建築士」という資格ができても、
それがイコール「設備設計の専門家」というわけではないことになります。
「建築士」が建築に関する専門家だと思っていたのに、
構造や設備のことにはあまり詳しくないことが発覚した。
で、構造や設備の専門資格を創設したけれども、
設備の「専門資格者」は "設備の専門家" ではない。
なんだか、わけがわからなくなりそうです。
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給水管の継手部分に、水漏れが発見された。
表面にうっすら水分が膜を張っている程度に見えたので、
ひとまず該当部分にパテを押し付けて済ませておく。
所詮はパテ。
そのうちに、パテ縁辺から、またじわじわと水が出てくる。
PSの床が湿っていることに、他の人が気づいた。
「おお、管から水が漏れているなぁ。パテ補修をした跡がある。
パテも劣化してきたかな。」
で、上から更にパテを貼り付ける。
その後も、誰かが見つける度に、
パテで補修。
時として、塗装。
布を巻き、ハリガネで縛り付ける。
ある日、PS扉の隙間から、水が湧き出している。
継手が、完全に破損していた。
周囲は水浸し。
付近の電気系統は、全滅。
こんなことなら、途中で継手をちゃんと換えとくんだった・・・。
・・・水漏れの原因を無視して、対症療法的にその場しのぎの対応を繰り返していると、いつか困ったことになります。
設備一建の制度も、同じように思えてなりません。
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こうなったら、一級建築士試験合格者には、抽選で一定割合ずつ割り振って、交付免許を分けてしまうとかしたら、どうでしょう。
もう、担当する分野を、強制的に決めちゃうんです。
役所の担当者から、「辞令」のように担当分野が提示されます。
役「あなたは、意匠設計専門として、免許を交付します。」
A「やった〜。念願かなって、建築士になったぞぉ〜。よぉし。
これからオレのことを、『新潟のライト』と呼んでくれたまえ。」
役「あなたは、構造です。」
B「ええっ!?今まで追及してきた意匠論は・・・。
ええい、構造的に表現してやるっ!」
役「あなた、電気ね。貴重な存在です。がんばって下さい。」
C「そんな・・・。何が悲しゅうて、電気設備設計?
オレはそんなことのために建築家を目指したんじゃないのに・・・。」
役「交付された専門区分は、一生涯有効です。区分に不服のある方は、
再受験下さい。」
C「再度合格したら、希望の区分に移れるのですか?」
役「その際には、改めて抽選ですので、ご希望通りになるかどうかはわかりません。」
C「ようし、何度でも挑戦してやる。ぜっっっっったい、建築家になるんだぁ。」
役「そうそう。抽選割合は、実態としての区分割合の実情に合わせて、毎年変わり
ますので、ご了解下さい。」
・・・10年後・・・
国内の一級建築士の割合は、
意匠系〜55%
構造系〜20%
機械系〜15%
電気系〜10%
であった。
10年前と比べて、相当に改善されたとは言え、機械系、電気系の割合がまだまだ少ない。合格者の抽選で機械系や電気系になった人は、8割が再受験して意匠系を目指すためであった。
そのため、合格者の抽選割合は、以下のようになっていた。
意匠系〜 5%
構造系〜20%
機械系〜25%
電気系〜50%
半分は、電気系。
意匠系は大変狭き門となった。
平均年齢は、
意匠系〜56.2歳
構造系〜35.5歳
機械系〜30.7歳
電気系〜27.5歳
電気系の大半は、初回の合格で覚悟を決めて電気分野に取り組んだ
人たちであった。
・・・どうですか?こんなの。
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本来、専門性とは、技術者倫理とは、
「自らの責任を負える範囲で、きちっとやる。
専門外のことについては、その道の専門家に任せる。」
そういうもんじゃないかと、思うのです。
設備一建は、一番最初に挙げた1〜3の誰がなったとしても、その専門性の発揮や技術者倫理の遵守が難しい資格になってしまうと思います。
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耳鼻科の医師が、
「この患者はオレの患者。脳でも心臓でも血液でも肝臓でも何でも来い。全部
診てやるぞ。」
そういうことは、普通しません。
ブラックジャックは、架空のお話。
(内科の医師が、消化器科と循環器科の両方を診ることができる、という例ならあるでしょうが。)
まして、
「作業療法も理学療法も看護も放射線も調剤も、いやいや病院の受付
だって掃除だって給食だって、医療界の仕事は全部、医師である
ワシの独占業務じゃぁ。」
なんて、独り占めするようなことはありませんよね。
そんなに何でもかんでも、負えるはずがありません。
それぞれの内容については、あまり詳しくないということにしか
なりません。
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設備設計一級建築士の制度が稼動して、良い方向に向かうのか、
ますます矛盾が生じてくるのか。(ワタクシは後者だと思いますが。)
法案にはない、省令や政令、告示などで、国交省がどのような施策を提示できるのか、観察してみたいと思います。
ただし、これまでの経緯から一番ありそうなのは、
設備がらみで、不具合、偽装、見落としなどが発覚。
↓
名前を使った設備一建「個人」を糾弾。逮捕。訴追。
↓
さらに制度改正。個人の責任・罰則強化。
根本が狂っているので、何をどういじっても、次々と問題が出てくるような気が。
杞憂に終わると、いいのですけど。
(「設備一建の、出自。」おわり。)
>みなさん、ビジネスチャンスです!
>どんどん取得しちゃいましょう
これって1のかただけでなく
2のかたも3のかたも同じでは・・と
思うのですが ちがうのでしょうか?
主旨の逸れたコメントですね すんません(^^)
当然の感想かもしれません。
設備屋「以外」の人にとっては。
そこが、もどかしく、淋しく、そして悲しいところです。
でも・・仮に設計の現場に於いて構造屋さんと設備屋さんだけで協力して意匠設計をするということは 可能なのかなぁ〜〜〜って思うのですが
もし 可能だとしたら・・・・・
意匠屋の立場からすると もどかしく、淋しく、そして悲しいところです
むずかしい問題ですね〜〜これは
ではでは
いえいえ。
ワタクシの記事やコメントこそ、気の利かないことこの上ありませんので。