いろんなタイプがありますが、これは、「立形」です。
「横形」というのも、あります。
保温のかかっていない槽の外観は、こんな感じになります。
暖めた湯をただ貯めておくだけのものと、この画像のように加熱用のコイルがついているものとがあります。
これは蒸気加熱コイルがついていますので、コイル下部に蒸気トラップがついていますね。
蒸気が熱を奪われて凝縮(液化)した分を、また熱源に戻してやるためのものです。
胴体には、マンホールがついています。
マンホールと言っても、排水桝のものや受水槽についているようなものとは違っています。
槽内部の圧力に対してしっかり耐えなくてはなりませんから。
貯湯槽は底の方が温度が低く、頂部の温度が高くなりますが、この画像のように内部の湯をラインポンプで循環させて槽内の温度を均一化し、有効容量を増す場合もあります。
病院やホテルなど、年中稼動するような施設では、必要貯湯量を2基の貯湯槽に分けて設置するのが普通です。
大きな貯湯槽1基にまとめてしまうと、トラブル時には湯が使えなくなってしまいます。2基に分けておけば、1基にトラブルがあった場合でも、とりあえず半分の湯は確保できます。
もちろん、イニシャルコストは余計にかかりますし、機械室の面積も余分に必要になります。「何を優先するか」が判断要素になります。
槽内の清掃をする際にも、2基に分けておいたほうが都合が良いわけです。
受水槽を2槽式にするのと同じように。
貯湯槽のほかにも、空調のポンプやら、換気ダクトやら、ケーブルラックやら、各種配管などが写っています。
照明器具は、機器類の上・配管やダクトの上などにつけても意味がないので、パイプ吊りやレースウェイ取付などによって、通路になる部分が照らされるように取り付けられています。
チェーン吊の照明器具もありますが、地震時のことを考慮して、振れ止め付のレースウェイを使ったほうが良いでしょう。
貯湯槽内の湯温は、設計上60℃に設定することが多くなっています。
「そんな熱い湯では、火傷する!」
という方もいらっしゃいますが、でも、60℃なんです。
実際に使う湯の温度は40〜45℃ですから、混合栓なんかで水と混ぜて使います。
40〜45℃という温度は、レジオネラ菌など、雑菌類が繁殖しやすい温度なのです。一時期、「24時間風呂」が流行りましたが、このところあまり聞かれなくなったのも、それが原因。
人間にとって適温ですが、細菌類にとってもとても良い環境なので、この温度で貯湯すると、貯湯槽ならぬ「培養槽」になってしまいかねません。
それで、雑菌類の繁殖がしにくくなる程度の温度である60℃くらいにしておくのです。
火傷の恐れのある場合には、ストッパー付のサーモスタットを取り付けた混合栓を使ったりします。意図的に操作しないと、40℃超の湯が出ないので、安全、というわけです。
老人保健施設(法律上のこのネーミングは何とかならんものか・・・)や幼稚園など、良くわからずに操作してしまいかねない施設では、湯使用場所の近くで水と混合し、適温にしたものが混合栓に送られるよう、2段階調節にする場合もあります。TOTOやINAXのカタログには「大形サーモスタット」などという名称で載っているものです。
この場合にも、サーモスタット以降の配管内で雑菌が繁殖しないよう、日々の
管理が大切になります。
風呂の濾過配管なども、要注意ですね。
(一時期、公共温浴施設でのレジオネラ菌被害が集中的に報道された時期がありました。)
「じゃあ、効率的に湯を送るため、貯湯槽内の温度をもっとあげてはどうか?」
ということで、70℃とか80℃で設定して運用している施設も、たまに見かけます。
でも、それもあまりおすすめできません。
配管やバルブ、各種継手類、水栓類、またシステムに接続されているポンプなどの機器類、フランジガスケットなど、熱にあまり強くない部分がある可能性があります。
設計時から、もともと80℃で使用する前提であれば、対応した材質のものを使用するのですが、当然高価ですので、通常は60℃程度の耐熱性しかない材料を
使用しているはず。
ちょっとの節約のために設計でそうていしていない温度に上げて、給湯システム全体をブッ壊してしまっては、元も子もありませんからね。
(「貯湯槽。」おわり。)
【関連する記事】
昨日、初めてこのページを拝見させていただいたつなぎの水道屋と申します。
けろさん、早速ですが、質問させてください。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei09/03.html
上記の第2章 飲料水の管理では、「貯湯槽内の湯温が60度以上、末端の給湯栓でも55度以上となるように維持管理すること。」と記載されているのですが、60度くらい(以上でないと)では、今後×のように解釈しての話ですが、
既存の設備に対して、これを適用した場合の、設備の不安点などないのか、教えていただけないでしょうか。
フォーラムではいつも拝見しております。
厚労省の情報を、ありがとうございます。
こういうマニュアルが出ていたんですね。
末端でも55℃ですか。
> 既存の設備に対して、これを適用した場合の、設備の不安点などないのか
どうでしょう。
良くわかりません。すみません。
「最低で60℃」を厳守するあまり、80℃設定にしてしまうと、やはりあちこちトラブルが生じるような気がします。
本来60℃で設計されていたのに、貯湯槽温度を85℃くらいにして運用していた施設のトラブルに出会ったことがあります。
「85℃」のせいかどうか、断言はできないのですが、
・貯湯槽と配管との接続フランジで腐食が進行して漏水した
・真空温水機のヒーター部接続フランジに加工されていた
ライニングが剥がれてコイル内を塞いでしまった
・循環ポンプ前後のゴム製防振継手成分が溶け出した
などの事象がありました。
高すぎる、温度は、設備に対してよくないのですね。
返信ありがとうございました。
85℃耐熱仕様の材料を使っていれば
問題は無いと思います。
小生は、30年ほど配管設備業を経営後5年前にリタイヤして、現在は「北の発明屋」のニックネームで新商品開発を生業としております。
配管設備にとって最も難しい<お湯>を極めることに挑戦し、2件の特許を取得して商品化しております。
温度差による不快感・不便性や火傷事故、湯量不足や貯湯槽の大型化の問題は温度差を無くする事で解消できることから、「温調型貯湯槽」を開発しました。 貯湯槽上下の温度差は1℃程度で推移しており、貯湯槽真下からの出湯を可能にした画期的な構造で従来型貯湯槽の50%の大きさで間に合います。
これは(財)日本発明振興協会と日刊工業新聞社主催の「第34回発明大賞」(H20年度)で考案奨励賞を受賞しました。
http://www.hatsumeiya.com/etc.html……を覗いて、コメント等を頂ければ幸いです。
他にも当ウエブの19位にも「開放型貯湯槽の高温水取水装置」が載っております。
そしてはじめまして。
ご紹介の貯湯槽の広告は、何かで拝見したことがあります。
よろしければ、またお越し下さいませ。
小生のブログ「北の発明屋の独り言」は、発明の感性を磨くためと称して勝手にフザケまくっていますが、「温調型貯湯槽」にコメント頂けるならば、ブログでもメールでも構いませんので宜しくお願い致します。
さて、当ウェブでもレジオネラ菌に関する項目が少なからずありますが、「温調型貯湯槽」は60度に設定すると槽内全体が設定温度になるのでレジオネラ菌は派生しません。
しかしながら、浴槽施設においては人の皮膚に付着しているので、浴槽内で殺菌しなければ効果はありません。 当ウエブのレジオネラ菌に関する記事等もここのところの論点が欠けているように思います。
「温調型貯湯槽」は槽最下部からの出湯が可能になり、槽内の湯が常に入れ替わるという全く新しい効果が生まれて槽内を常に清浄状態を保ち、また設定温度以上の高温水は供給されないので安全面も確保できます。
古い体質の業界において、お湯を底から採るという大胆な逆転発想のために当初は拒否反応が強くて苦労しました。 広く認知するためのアドバイス等お力添えを願えれば幸いです
(あまりご参考にならずすみません)
当ウエブ上位の“新発想の貯湯槽”で、温度センサーを貯湯槽の下部に設置したものがありますが愚の骨頂です。 理由は、温度センサーを下部に設置したらボイラは燃えっぱなしの状態で、槽上部の温水温度は沸点に近くて危険極まりなく、また周辺機器に及ぼす影響は計り知れません。
故に従来の貯湯槽は槽の中央付近で温度制御をしているのであり、設定温度60度=供給温度ではないのです。 …つなぎの水道屋さんの心配もここにあります。
大手貯湯槽メーカーの発想は、槽内を極力動かさずに逆に温度差を利用して高温水を確保するというのが主流でしたが、最近は攪拌効果で温度差を解消する方式に変わって来ました。
「温調型貯湯槽」は配管を槽内に延設しただけなので、無圧で故障の心配が無く攪拌するための新たな動力も必要としない省エネタイプです。
更に、攪拌措置は容積縮小分で吸収されるので価格的にも従来型貯湯槽と遜色ありません。
(メールで詳しく頂戴しました)
「用途によって有効な場合と、そうでもない場合がありそうな気がする」というのが、現段階のワタクシの感想なのでした。
何とも歯切れの悪い物言いで申し訳ありません。
単純に貯湯槽を縮小しただけなので使用法や目的は従来の貯湯槽と同じですが、温度の均一化やエアの混入減少による効果から業種によっては最適な環境を提供します。
例えば、ボイラに能力があれば複数の貯湯槽を設けてそれぞれ必要な温度を作ったり、気泡混入や温度管理が命である食品工場等には最適です。
従来工法の欠点を全て解消するこコンパクト型から、将来的には貯湯槽の主流になるものと期待しております。