2006年12月29日

標準解答例A。

(注)
本記事は、平成18年度一級建築士試験・製図課題に関して公表された「標準解答例A」に基づき、「設備の視点で」率直に書いてみたものです。
従いまして、合否の判断とは無関係です。
あるいは、負の相関関係(要は、悪影響)があるかも知れません。

悪文であり、非常なネガティヴチェックでもあるため、精神的・肉体的な健康に害を及ぼす恐れもあります。

それを理解し覚悟した上で、「それでも読むぞ」という方のみ以下をご覧下さい。

(なお、本記事をお読みになったことによって生じるあらゆる被害・損害について、管理人は責任を負いません。)
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本当に、大丈夫ですね?









いいんですね?












・・・では、以下に。











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1.設備計画の要点

こちらも「設備計画の要点」から。

「地下ピットは、地下1階に浸入した雨水を排出するための雨水排水槽及び地下駐車場に設置する泡消火設備の消火水槽として有効利用した。」


1-1.雨水排水槽

車路を通じて地下駐車場に入ってきた雨水を排出するため、雨水排水槽は確かに必要になります。

傾斜車路を下ってきたところに、グレーチングを設けて、集水することになるでしょう。

また、駐車場内にもところどころグレーチングなり集水桝なりを設けて、効果的に集水することになるでしょう。

それでも、雨水排水槽は地下ピット全面になる必要はありません。せいぜい1コマ分あれば十分です。

なお、水槽の一部には釜場を設けて、排水ポンプを設置することになります。
当然、釜場の上方にはマンホールを設けて、ポンプの引き上げが可能にしておかなくてはなりません。

そうすると、地階平面図に「下部雨水排水槽」とか、マンホールなどが図示されていると、とてもそれらしくなることでしょう。

この標準解答例Aでは、そこまでの連動は不必要としたようです。

なお、地下水位によっては、雨水の他に、湧水排水槽も設けたほうがよいかもしれません。その場合には、機械室の下部にすると、なお良いことでしょう。解答例Aの電気・機械室はFLが下がっていますから、この下部に設けるのが自然です。


1-2.消火水槽

泡消火設備の消火水槽という記載をしてあります。
地下駐車場には特殊消火設備が必要となりますから、泡や粉末などが設置されることになります。泡の場合ならば、水と混合するため消火水槽を要します。
粉末ならば、水槽は不要です。
最初から「泡」を想定しているなんて、優秀ですねっ!
(当たり前。何たって、『一級』の建築士なんですから。)

消火水槽は、一般的には消火ポンプの下部に設けられることが多いですから、機械室下部となるのが自然です。
解答例Aの場合には機械室FLが下がっていますから、駐車場下部に設けた消火水槽から横引きで採水することも可能と言えます。が、水槽の減水警報を取ったりする関係上、水槽上部にちょっとしたボックスが露出してしまいますから駐車場部分ではないほうが良いとは思いますが。

泡消火の他に、屋内消火栓も必要になるように思われますから、こちら用の消火水槽も設置されることになります。


1-3.有効利用

ピットを水槽のために「有効利用」した、という記述ですが、ちょっと気になります。
上述のように、ピットを「利用」するのは、雨水排水槽と消火水槽くらい。
せいぜい合わせて2コマ分くらいです。地下全体で17コマあるうちの2コマで「有効利用」と言えるのかどうか、疑問もあります。

そもそもピットは、配管やケーブルを通すために必要となるスペース。

入るべき配管やケーブルがたくさんあるなら、水槽として使わなくても十分に「有効利用」されていることになります。

むしろ、ピットの一部が水槽であると、その部分に配管やケーブルを通せなくなるので、不便な場合があります。

配管やケーブルが全く通ることのない部分であれば、設備的にはピットは不要です。であれば、その部分のピットを無くす、ということも十分に考えられます。
基礎形状にもよりますが、ピットは作らないほうがコストは安いでしょうから。


地下駐車場下のピットに入る配管類とは・・・?

雨水排水の配管、機械室下部以外に消火水槽を設けた際の採水配管、くらいでしょうか。

消火ポンプの電源や警報関係のケーブルなどは、ピット内を通すよりも駐車場内の天井付近で露出としたほうが良いでしょう。


となると、
「そもそも全面ピットは必要か。」
「水槽ではちょっとしか使わない。」
という意味で、「ピットの有効利用」という説明が揺らぐことになります。


そういえば、標準解答例@で、
「ピット深さ2mもいるのかなぁ。」
という話を、書き忘れていましたね。

どうせこれだけのピットを断面図に描くなら、人通口などをちょちょっと描いておくと、「コイツ、知ってるじゃん。」と思わせることができるかも。


2.平面図

2-1.総論

地下駐車場階高の件、
共住のMBやPSに有効部分がほとんどないこと、
共住PSと1階部分との接続性がないこと、
1階天井内の配管水平展開の難、
住戸排水横引きの難、

などにつきましては、解答例@と同様です。


2-2.便所のPS

製図試験のいろんな解答例を見ていつも不思議なのが、便所のPSです。

事務所ビルなどで、各階の便所がずっと縦方向に連続している場合ならこれでいいのですけど。

解答例Aのように1階部分だけに便所がある場合に、一体何のためにこんなにでっかいPSを設けるのだろう、と思うのです。

給水管はすべて下から来るし、排水管もすべて下に行く。
床上に立ち上がってくるのは通気管くらいです。
なのに、ずいぶん広いPSが描かれています。

意匠的には、この部分にこの広さのPSが必須なものなのでしょうかね。
設備では使わなくても。


2-3.共住PS

解答例Aの住戸には、MBとPSとが描かれています。
MBには給水(やガス)の立管が通り、メーターが入ることになるのでしょう。
PSは排水用になるものと思われます。
この排水は、ユニットバスと外壁(もしくは戸界壁)に挟まれていて、完成後は二度と日の目を見ない位置にあります。
建物を壊すまで半永久的に絶対劣化しない材料を使って、まったくミスのない完璧な施工をしておけば、ノーメンテで大丈夫だという自信の現れなのでしょうか。

一般的なマンションでも公営住宅でも、「ノーメンテでOK」という例は知りません。

けれども、実際に建っている共同住宅では、こういう「二度と手を出せない」PSが当たり前に存在するもの事実です。

「一級建築士の合格図面」に倣っているのでしょうか。


まあ、「基本プラン」ですから、柱型をふかして1本配管を通すようなPSなど、描かなくても全然構いませんよね。
だから、実際には住戸水廻りの直近柱型には、排水立管が通るということになりましょうか。

ただ、きちっと明記しておくと「メンテナンスを考慮して」というコンセプトがはっきりしてきますね。

長期修繕計画で、「25年後に配管更新」とか考える場合にはやはり専有部内立管よりも、共用部からアクセス可能なPSのほうが良いのですから。

「この建物を、どのように手を加えつつ、何年くらい利用しようと思っているのか。」

建築ストックの有効活用が叫ばれている昨今、かなり重要な要素だと思います。

ようやっと、SI(スケルトン・インフィル)なんていうものも出てきましたが、単に「リフォームしやすい」程度に考えられているように思います。設備的メンテ・修繕を行うことは、まだまだあまり認知されていない、と言えましょう。


一級建築士の製図試験は、飽くまで「基本概念を表現するたたき台プラン」なのですから、実施設計図をこのレベルで済ませようなんて、考えないでいただきたいものです。(設備的考慮について、ですよ。)


2-4.便器の位置

細かいですが、診療所便所の便器が思いっきり大梁に乗っかっています。

基本計画レベルでは全く問題ないとは思いますが、実務の際にそういう意識があると、手戻りが少なくて、良いのでは。

「絶対に成立しない」プランを出したって、仕方ないじゃないですか。


「排水横取り出しの便器を使用し、ライニング内を横引きして・・・」
いろいろ手はありますから、「わかった上で」プランに乗っけるのはもちろんOKです。

「よくわかんないけど、設備屋さん電気屋さんが何とかしてくれるんじゃないの」という発想では、建築行為の統括者である「建築士」としてはまことにお粗末でございます。


2-5.共用部門のククリ

設備とは関係ないですが、地階の電気・機械室の「共用部門」としてのククリは、特に考慮されなかったようですね。

それよりも、地階の2方向避難。これが、結構きっちり表現されているように思います。


2-6.ドライエリア

このドライエリアが、地下駐車場の給排気のために使用されるとすると、ちょっと気になることもあります。

駐車場の排気が、1階部分のゴミ置場の臭いとミックスして、南東側住戸のバルコニーに到達する・・・・。

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以上、標準解答例Aに関する、「設備の視点」での記事でした。

飽くまで「設備の視点」ですからね。
「ケンチクのわからんしょーもないヤツ」的な批判は、的を外れております。

こういう見方は、誰もしないし、考慮しても仕方ないし、こんな観点で製図試験の図面を描こうとしたならば、意匠的に破綻を来して即刻「W」図面になること請け合いです。

なので、この記事の内容は『無視』するに限ります。

万一、読んでしまったという不用意な受験生の方がいらっしゃいましたら、頭の中をリセットしてクリーンにしていただくことをお奨めいたします。

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既に試験をパスされて実務に取り組んでおられる設計者の方々は、頭の片隅にちょこっとひっかけておいていただくと良いかも知れません。
プラン作成のときに少しは気にしていただくことで、設備設計屋や設備業者さんとの無用な軋轢を減少させることが可能と思います。

うまくいけば、「設備を良くわかった図面を描いてくれる優秀な意匠屋さん」と見てもらえて、少々の無理難題も快く引き受けてもらえるようになるかも知れません。(保証はしませんが。)

逆に、こういう視点をことごとく外したプランを出してしまうと、
「設備(内臓)もわからんでケンチク(身体)をエラそうに語る理想論だけの意匠屋さん」と見られて、テキトーにあしらわてしまう危険性があります。
設備屋さんは下請根性旺盛のため、「このワカンナイ人に何言っても無駄」と感じると、何にも言わなくなることが多いようですから。
その場合、完成後のメンテナンスで苦労することになるかも知れません。

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以上、設備屋けろ による、標準解答例に対する設備的考察(ウソ。タダのいちゃもん)を終ります。

(「標準解答例A。」おわり。)
posted by けろ at 12:44| Comment(4) | TrackBack(0) | 建築士試験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
うは〜。
年明け早々、お腹一杯です。

今年もどうぞ宜しくお願い致します。
Posted by すみ at 2007年01月04日 22:19
●すみさん

「年明け早々」にならないように、年末にUPしたのですが・・・って、年末アップ→年明けに読む、なので、やっぱりダメですね。ごめんなさい。

頭の中「リセット&クリーン」でお願いいたします!


こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。
Posted by けろ at 2007年01月05日 17:01
先ほどはどうも。

ピットの話はこちらだったんですね。
なるほど<ストーリー>がい・ろ・い・ろ
見えてきた気がします。

☆最近の学生さんは堅実な人が増えたのか
「意匠」の人気が下がったとも聞いちょります。
設備やさん人気上昇中!
これからは 設備やさんにお伺いをたてないといけません

今後とも よろしくお願いしますね!

Posted by pico at 2007年01月22日 18:11
たまたま、久々の記事UPにタイミングが合っていましたので、早めにお返事できました。

> 設備やさん人気上昇中!

ホンマでっか? 初耳でした。

でも建築学科で設備が学べるかというと、そうでもない。
衛生工学科や電気工学科では、建築が学べない。

なのに、「設備設計一級建築士」新設。

困ったものです。
Posted by けろ at 2007年01月22日 20:54
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