本記事は、平成18年度一級建築士試験・製図課題に関して公表された「標準解答例」に基づき、「設備の視点で」率直に書いてみたものです。
従いまして、合否の判断とは無関係です。
あるいは、負の相関関係(要は、悪影響)があるかも知れません。
悪文であり、非常なネガティヴチェックでもあるため、精神的・肉体的な健康に害を及ぼす恐れもあります。
それを理解し覚悟した上で、「それでも読むぞ」という方のみ以下をご覧下さい。
(なお、本記事をお読みになったことによって生じるあらゆる被害・損害について、管理人は責任を負いません。)
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本当に、読むんですね?
いいんですね?
・・・では、以下に。
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2006年12月19日、平成18年度一級建築士試験「設計製図の試験」の合格発表がありました。
受験された方にとっては、運命の日。
ワタクシのように学科で落ちた者にとっては、普通の日。
けれども、やはり気になる日でありました。
なっかなかつながらないJAEICのページ。
何度も試して、やっとつながる。
(ご自分の発表を見に来られた方、ごめんなさい。ワタクシなんぞがトラフィックを増やしておりました。)
(国交省のページの発表の方が、つながり易かったかも。)
合格発表の氏名を探す。(もちろん、自分の名は無い。当たり前。)
そこで、愕然としたり。
なんてこった・・・。
まっとうな「建築屋さん」たちが一生懸命、真摯に取り組んでおられるにもかかわらず、こんなに狭き門だとは。
これじゃ設備屋風情のワタクシなんぞ、受かるはずないじゃん。
と思ったり。
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午後からUPされた標準解答例を見ました。
感想は主に、
1.思ったよりも、「設備計画の要点」がきちっとしていたこと。
2.平面は相変わらずであったこと。
の2点でした。
(くどいようですが、飽くまでも「設備屋の視点」ですからね。)
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「設備計画の要点」については、試験問題を見た時には、ただのお飾りだと思っていました。
社会資本整備審議会 建築分科会 基本制度部会 (長い・・・)の答申結果に沿って構造や設備の新資格を設けるに当たり、
「ほら、一級建築士試験では、構造や設備についても知識・技能を問うておりますよ。」
というアリバイ作りのために、一応のせておいただけ、と。
「80字なんてわずかな字数で、何を書けというのか。」
「どうせ、何か書いてさえあればいいんだろう。」
その程度に思っておりました。
(2006年10月14日の記事「一級製図、設備の視点。」参照。←この記事も、危険。)
けれども、公表された標準解答例には、結構まともなこと(失礼っ!)が書いてあって、意表をつかれたのでした。
「お、結構やるじゃん。設備の人にも、手伝ってもらえたんだ。」
ま、でも当然と言えば当然。
だって、JAEICでは、建築設備士試験もやってるんですから。
ただし、標準解答例の内容は、「要点」というよりは、「内容」か「事例」という感じでした。
そりゃ、そうでしょう。
たとえば設備設計の製図課題があったとして、「意匠計画の要点を80字で書け」という問題が出たら、意匠屋さんはハタと困ってしまうのでは。
書くべきことがたくさんあって。
では、以下に、標準解答例@について考察してみます。
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1.設備計画の要点
まず、「要点」を見てみます。
「各階のパイプシャフトは、メンテナンスの容易性、地階の電気・機械室への接続性に考慮し配置した。空調屋外機は騒音を考慮して住戸から離れた1階のテラスに配置した。」
さて、要点に書かれていることは、図面上反映されていますでしょうか。
見てみましょう。
1-1.メンテナンスの容易性
各階のパイプシャフトは、「メンテナンスの容易性に考慮し配置」されているでしょうか。
[地下1階]
PSは、電気・機械室に面しています。こちら側に点検扉をつければ、メンテナンスは容易と言えます。
EPSは、車路に面しています。こちら側に点検扉をつければ、メンテナンスは容易と言えます。
けど、PSは何も機械室の隣である必要はありません。
というか、わざわざ隣にPSを設けなくても、機械室の上にPSであれば良いのです。
そういう意味では、何を考慮しているのか意味不明でもあります。
EPSも、電気室の直上で良いのです。
メンテナンスのために、一度機械室を出て、EPSの点検扉を開けて。
「容易」ではありますが、「面倒くさい」とも言えます。
[1階]
1階では、PSもEPSも居住者用エントランスに面していますから、そちらに点検扉をつけることで、メンテナンスは容易となります。
[基準階]
基準階の主PSと主EPSは、廊下(屋外)に面していますから、そちらに点検扉をつけることで、メンテナンスは容易となります。
各住戸のPSもすべて廊下に面していますから、こちらもメンテナンスが容易です。
以上のように、各階のPSは「メンテナンスの容易性に考慮し配置」されています。
スバラシイッッッ!
[水平方向は・・・]
さて、ここまで書いてきたのは、実は「垂直方向」のことばかりです。
配管やケーブルというものは、垂直方向だけに伸びているものではありません。当たり前のように、水平方向にだって伸びているのです。
標準解答例では、そのあたりを考慮しているでしょうか。
い・ま・せ・ん・!
基準階の各住戸についているPSには、給水管、排水管、電気ケーブル、システムによってはガス管や灯油管が入ることになります。
2階から5階までは、縦方向にまっすぐ伸ばせますからよいのですが、1階部分では天井内での水平展開が出てきます。
1階部分のPSを探しますと・・・・・。
階段横、EVうしろにあるだけです。
そうすると、2〜5階部分の住戸PS内の配管は、このPSとの間天井内を横引きすることになります。
共用部門、診療所部門の天井内を横引きしていくことになります。
「メンテナンスが容易」と言えないのはお分かりかと思います。
1階診療所の天井内を通る、共同住宅用給水主管。
継手の施工不良で水漏れが発生。
診療所の営業中に、「ちょっと失礼」と作業員が入ってきて、診療廊下の天井点検口からごそごそもぐっていき・・・。
あちこちの保温材を剥がしてみて、漏水場所を発見し、
天井の石こうボードを何枚か剥がして応急補修して。
後日休診日に、ちゃんと補修をやり直す。
排水管はこんな距離横引きできるはずもありませんから、実際には手近な柱型や書庫などの部分まで振って落とすことになりますね。
柱型をふかして配管を通す場合には、その部分のメンテナンスや修繕を行うためには、仕上げをぶっ壊すことになってしまいます。
以上のことから、
「メンテナンスの容易性に考慮し配置」しましたっ!
って、胸を張って宣言できるほどのことは、していないと思います。
空間として、部門ごとのククリが必要なように、設備としても本来はそういうククリがあったほうが良い。他部門に悪影響を与えないように。でも、そうするためには、基本プランの時点でそういうアタマで見る目が必要なわけです。
2〜5階部分のPSを縦方向に通した、ということに関しては、評価することができます。(基準階なのだから、通って当たり前ですが。)
50m2住戸のPSは、ほとんど梁に阻まれて、立管が通せる部分が限られています。梁を左に寄せて、壁仕上げとのすき間に頑張って配管することになります。
85m2住戸のPSは、50m2に比べて間口が狭い分、奥行きを取って、面積を確保しているようです。この場合は2列に配管類を並べることになります。ただし、2列にびっちり並べると、奥のほうの配管は完成したが最後、解体まで手出しができなくなる恐れがあります。
PSやDSは、平面図上の面積よりも、「実際に縦に使える面積」が重要になります。
実際のマンションの感覚でいくと、どちらのタイプのPSも、あとあとのメンテナンスが大変厳しい面積だと感じます。
1-2.地階の電気・機械室への接続性
次に行きましょう。
各階のシャフトは「地階の電気・機械室への接続性に考慮して配置」されているでしょうか。
[地下1階]
主PSは電気・機械室に隣接しています。
けれども、主EPSは、電気・機械室から離れています。
間にPSを挟んでいるため、電気室から一旦車路部にケーブルを引き出して、あらためてEPSに入れることになります。
電気に関しては、「接続性への考慮」と言えるのか、疑問です。
そもそも「電気・機械室」などという室は、本来ありえませんから、「接続性」を考えるなら、機械室とPS、電気室とEPSという組み合わせで論じる必要があります。
[1階〜5階]
地下1階の上部にそのままPSとEPSがありますから、完璧です!
けれども、ここで疑問があります。
「この3mもあるPSに、いったい何が入るんだろう。」
地階の機械室から各住戸に伸びる配管は、給水管だけだと思います。
可能性としては、都市ガスの配管、灯油関連の配管ぐらいでしょう。
しかも、基準階部分は通常住戸PS内に立管を通しますから、2〜5階のEV後ろのPSに入るべきものは、屋内消火栓の配管、ルーフドレン管くらいでしょうか。東京ミッドタウンのような巨大複合施設における冷凍機の冷却水管が何系統も通っていれば、このくらいあっても何ら不思議はありませんが。
地下駐車場の給排気ダクトを通すことも可能ですが、せっかくドライエリアを設けるのですから、わざわざ上まで持っていかなくてもいいように思います。
1階部分の給排気ダクトを通すのも不自然です。
1階診療所部門の空調機用冷媒配管を一度ここから地階におろして、室外機付近で立ち上げる、ということも考えられます。が、3mの幅は必要ありません。
EV横のEPSも同様で、共用部分の照明用、火災報知器用、放送用、テレビや光通信ケーブル、分電盤やら何やら・・・いろいろ考えても、やっぱり広すぎに思われます。
たぶん、この大きなPSとEPSは、「単一ダクト方式」の解答例におけるDSの名残なんじゃないでしょうか。何となく、お決まりで描いちゃった。そんな感じかも知れません。(煙突を描かなかっただけ、エライかも。)
・・・いえ、PSやEPSが広すぎて困ることはありませんよ。
設備屋さんや電気屋さんにとっては、どんなに広くたって構いません。
でもできれば、配管やケーブルが結構入る住戸PSのほうを広く取っていただいたほうが、施工もメンテナンスも容易で、あとあとのトラブルも少なくなるし、システム変更や時代の変化に対応するために有益であると思うのです。
1-3.騒音
「空調屋外機は騒音を考慮」して配置されているでしょうか。
一番近い50m2住戸から、平面的に1スパン、立体的に1フロア分以上離れていて、とても良さそうです。
あいだに屋内階段があるため、直達騒音もありません。
OKですね。
ちょっと気になる点があるとすれば、北西側敷地の集合住宅から見てどうか、ということでしょうか。
でも隣の集合住宅はちょうど東面が引っ込んでいますし、直達騒音のレベルもその分下がることでしょう。
診療所の屋外機は夕方で止まるでしょうし、レストランの分も深夜まで稼動することはないでしょうから、影響は少ないでしょう。発生騒音自体、屋外機1台あたり56〜7dBくらいのはずですので、2台フル稼働で60dB程度と考えられ、駅から200mの市街地としては、十分静かと言えるのではないでしょうか。
「こんなでっかい屋外機が4台も必要か?」
「テラスの脇に室外機?」
は、この際置いておきましょう。
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2.平面図
「要点」と一緒に、ある程度考察してしまいましたが・・・。
「要点」とは別の面で気になる点も少しありますので、触れてみます。
2-1.地下駐車場の階高
給排気ダクトのことを考えると、「梁下2.3m以上」の確保が難しいように思います。
ダクトレス換気システムにするなら、対角部分にも換気機械室や換気塔などが欲しいところです。
2-2.1階の排水
2階からやってきた排水も同様ですが。
どっち方向に出すにも、何が生じそうです。
・・・・・ね? わかります?
排水のことを考えても、もちょっと階高を取っておくと良いのですけど。
2-3.厨房排気
1階レストラン厨房の排気をどうするか。
悩ましくないですか?
2階住戸に、いつもレストランの料理のにおいが上がってくるじゃ、イヤだと思いますが。
「おかずがなくても、香りでゴハンが食べられるから、節約になってGOOD!」
・・・落語になっちゃいます。
2-4.外構
実際には、道路境界部にグレーチングが必須。
ついていて当たり前のものです。
当たり前すぎるから、描かなかったんでしょうね、きっと。
2-5.住戸内部の排水
床コロガシの配管だと、横引きもそこそこあるし、流れが悪そうですよね。
流し台の排水管なんか、ほどなく堆積物が溜まって、臭いが出てきそうです。
トイレと流し台とUBと洗面と洗濯の排水を、まさか1本にまとめようなんて考えはないですよね。
あれっ? 洗面と洗濯が無い。
2-6.住戸給湯
どうでもいいんですけど、住戸給湯は「電気温水器」ではなさそうですね。
置く場所が無いですから。
すると、ガスか灯油の給湯機か何かですね。
PS設置か、バルコニー設置。
灯油の場合は、絶対的にPSが狭そう。
EV背中のPSを有効利用を図ったほうがいいかも知れません。
(配管横引きが長くて何かと大変ですが)
・・・書けば書くほど、どうでも良い文句になっちゃいますので、この辺で。
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以上、標準解答例@について、設備の視点で考察してみました。
設備に関しては、このくらいが、この製図試験に求められている「合格水準の標準的な解答例」ということです。
「構造の視点」でのご意見も、ぜひうかがってみたいものだと思います。
「意匠の視点」については、各所で多くの方たちが取り組んでおられますので、設備屋が何をかいわんや、です。
そして、「意匠の視点」こそ、合否に直結する最も重要な内容です。
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以上のように、考察(うそ。ただのイチャモン)を加えてみて、思ったこと。
「合格水準の標準的な解答例」の他に、
「本来あるべき理想的水準の解答例」も示して欲しいものです。
この国の「一級建築士」のレベルの高さを示すような。
「中央指定試験機関」の有能さを誇示するような。
(「標準解答例@。」おわり。」)
【お詫び】
初めに、十分にお断りしたつもりではありますが、その上でお読みになって、ご気分を害された方、製図試験対策に混乱を来してしまった方がいらっしゃいましたら、お詫び申し上げます。
・・・でも、責任は負えません。すみませんが。
こういう下らんことを書いてる間に、「合格できる図面」についてしっかり勉強せい。
いやその前に学科を通るように学習せい。
というお叱りがあるのはごもっともです。
そのお叱りは、完全に的を得ています。
下らんこと(意匠屋さんから見て)に情熱を燃やすのが、設備屋のサガなのかも知れません。
標準解答例A。もいかれるんですね。ね。
>洗面と洗濯が無い。
いや、住戸Aには、あるんですよ。
実は。
Bも、キッチンにもしかしたら、洗濯を含めた
家事コーナーがあるようですよ。
トイレの個室のサイズと、風呂の洗い場のサイズが、ほぼ一緒だったり、キッチンよりも洗面のほうが立派だったりするんで、解り難いですけれどね。
そんなことより、続編。
期待しております。
ムフフ。
家事コーナーがあるようですよ。
そういう解釈も、成り立ちますね。
なるほど。
いずれにしても、排水横引きの難アリです。
> そんなことより、続編。
> 期待しております。
> ムフフ。
・・・ウヒャヒャ。
すみさんとこから 飛んできました。
>「お、結構やるじゃん。設備の人にも、手伝ってもらえたんだ。」
この辺り設備やさんにお聞きしないと
わからない部分があるのですが、
規模的なところで気になるコトがありましたので教えて下さい。
【平成18年設計製図試験 検証-4】
http://pico06.blog56.fc2.com/blog-entry-94.html
>「本来あるべき理想的水準の解答例」も示して欲しいものです。
確かに確かに (^^ゞ
いらっしゃいませ。
みなさん、きちっと検証されていて、偉いなぁと思います。(なんて、他人事ではダメなんですけど。)