設備って、いろいろな材料・部品(木に相当)が組み合わさって、システム(森に相当)を形成しています。
ときどき、「木」は見るけれども「森」は見ないという事態を見かけることがあります。
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バルブが錆びて、水漏れが起こりました。
A「いや〜、大変だった。いろいろ水浸しで、大損害だ。」
B「では、もう錆びたりしないように、取り替えるバルブはステンレス製にしちゃいましょう。」
A「おお、それはいい考えだ。めでたしめでたし。」
バルブが錆びた原因は、何でしょう。
そのバルブだけの問題であることもありますが、大抵は他の部分との関連があります。
もしもこのバルブをステンレス製に替えたならば、今度は別の部分が錆びてしまうはずです。
基本的に、金属は錆びますから。
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配管が錆びていました。管の中には赤い錆びこぶが一杯です。
A「これは大変。配管をすべて取り替えよう。錆びないようにステンレス管にしよう。」
B「そうですね。そうすれば半永久的に大丈夫ですね。」
そして、配管更新工事をして、1年後。
前のまま使用していた給水ポンプがボロボロになってしまいました。
ポンプは鋳鉄製。以前は配管が錆びてくれたので大丈夫でしたが、配管が全部錆びにくいものになったので、今度はポンプが錆びたわけです。
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A「お湯の出が悪いよ。もっと、勢いよく、じゃんじゃん出るようにしたいなぁ。」
B「そうですねぇ・・・。あ、図面を見ると、『給湯循環ポンプ』ってのがありますね。これをでっかいヤツに替えましょう。そしたら良く出るようになりますよ、きっと。」
A「では、そうしよう。」
せっかく大きなポンプにしたのに、お湯の出は一向に良くなりません。
それどころか、給湯管があちこち水漏れするようになりました。
B「もう、配管が古かったんですね。仕方ないです。」
A「ムムム、困ったものだ。管も取り替えるしかないのか。」
「給湯システム」という「森」を見ないと、こうなっちゃいますね。
給湯循環ポンプは湯を出すためのポンプではないですから、これをどんなに強力にしても無駄ですね。
無駄どころか、それによって返湯管の流速が上がり、管が急速に傷む結果になります。
給湯システム全体を見てみて、システム的に大丈夫なら、補給水圧を上げる方向(減圧弁が入っていたらその設定圧を上げるとか)で考えていかなければなりません。もちろん、大丈夫ではない場合もあり得ますが。
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設備が劣化してくると、更新する必要が出てきます。その時には、劣化している個々の部分(木)だけではなくて、全体のシステム(森)が果たして妥当なのか、システム上の不具合が無いか、検証してみるべきです。
場当たり的に傷んだ部分だけを直すよりも、システム全体にちょっと配慮したほうがお金もかからず効果が高い事も、あるのですから。
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建築士試験で、「設備の内容はむずかしい」と聞くことがあります。
実務とは関係ない重箱の隅の事項も確かにありますが、意匠専門の方はそんな問題は捨てても構わないでしょう。他で点数を取ればいいんですから。
けれど、平成15年や16年に出たようなフロー図付きの問題は、「システム」という概念があれば、さほど困らずに正答を導くことができます。暗記も必要ないですし。
「森」を見てみませんか。
(「木を見て、森も見る。」おわり。)