2006年11月21日

技術士法。

「技術士法」という法律があります。

http://www.engineer.or.jp/gijutsusi/Houritsu.html

所管官庁は、かつては科学技術庁、現在は文部科学省です。


「科学技術」に関する、21の部門と、たくさんの選択科目(専門分野)があります。
(↓ 第二次試験の科目表)
http://www.engineer.or.jp/examination_center/application_guidance/subject_2.pdf


部門と選択科目を見ると、「科学技術」について広範囲に網羅されていることがわかるかと思います。


でも、この中には、「建築」というものは入っていません。

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「建築」を構成するさまざまな要素技術は入っています。

たとえば、

【建設部門】

 選択科目:鋼構造及びコンクリート
 選択科目:都市及び地方計画

は、「建築」に深く関わる分野でもあります。
建築構造士やまちづくりにかかわっている建築士の中には、取得している人もいます。

同じく建設部門の、

 選択科目:施工計画、施工設備及び積算
 選択科目:建設環境

などもかかわりの深い領域です。


材料の面では、

【金属部門】
【資源工学部門】
の各選択科目が関わってきます。


また、

【電気電子部門】

 選択科目:電気設備

【情報工学部門】

 選択科目:情報ネットワーク

などは、建築電気設備に深く関わる領域です。


【機械部門】

 選択科目:動力エネルギー
 選択科目:熱工学
 選択科目:流体工学
 選択科目:交通・物流機械及び建設機械、

【衛生工学部門】

 選択科目:空気調和
 選択科目:建築環境

などは、設備にかかわる分野です。


プロジェクト全般にかかわるものとして、

【総合技術監理部門】

というものもあります。


【生物工学部門】などは、医師など医療従事者で取得している方がいますね。

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要素技術はいろいろ入っているのですが、それらを統括する「建築全般」に関しては、「建築士法」が規定しています。

つまり、法律の体系上は、「建築」とは、「科学技術の一分野」ではなくて、「科学技術の多くの領域を含有した『統合技術』である」ということができます。


「技術士に『建築部門』もつくって、技術士法と建築士法を統合しよう」という意見をおっしゃる方もいますが、それぞれの法律の歴史的背景や、権益などもあって、そういう議論はたぶん進展しないでしょう。

だいたい、「建築士」に対して「技術士」という資格は認知度が無さ過ぎますしね。


ま、所管官庁が違う(業界団体に天下ってくる系列が違う)のですから、統合なんざありえない話でもありますが。

建築士法は、国土交通省(かつては、建設省)所管ですし、
技術士法は、最初に記したように文部科学省(かつては、科学技術庁)所管です。

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技術士法では、

「技術士は,その業務に関して技術士の名称を表示するときは,その登録を受けた技術部門を明示してするものとし,登録を受けていない技術部門を表示してはならない。」

という「技術士の名称表示の場合の義務」が規定されています。

ですから、資格を表示するときに、

技術士(建設部門)

などのように、部門が必ず明示されています。専門領域を明示して、「何が得意分野なのか」他の人がわかるようにするためです。
(タテマエはそうですが、部門名を見ただけでは何が何やらわからん、とういうのが実情です。そのため、わかりやすいように部門名のほかに選択科目名も表示している人もいます。)


医師の場合も、医療法や医療法施行規則によって、「標榜科」が規定されています。
科の表示のない病院や診療所では、どこに行ったら良いか、わかりませんから。
「お腹が痛くて行った病院が、実は眼科専門であった」
のでは、困るわけです。


建築士は、一般のお客さんにとっては「良くわからない」存在なのではないでしょうか。
建築には、「科学技術全般」の要素技術がほとんど含まれています。
それらについて、すべてマスターして専門家であることは、大変難しいことだと思いますが、一般の人たちは、「建築士は建築に関するプロ」だから、「すべてわかっていて当たり前」と思っています。

建築士会では、「専攻建築士制度」を設けて、そのあたりの不都合を改善すべく努力しているようですが、まだまだ知られていない(当の建築士にさえ)のが現状のようです。

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知人から相談されたことがあります。

「古い家を何度も改修・増築などをして使っているんだけれども、あちこち傷みが激しくて、と言って、立て替えるほどの費用も用意できない。払えるだけのお金で、できる限りのことをしたいので、業者に見積お願いしたいんだけど。」


現状がどうなっているかわからないのに、「いきなり見積」は厳しいんじゃないかと思いました。まずは、調べて、設計して、それからじゃないか、と。


で、ハタと困りました。

「それを、誰に頼めばいいんだろう」って。

世の中に建築士は多いけれども、そういうのが得意な人って、いるんだろうか。いるんだろうけど、どうやって見つけたらいいんだろう。


設計業界も厳しい折。話があれば、

「ハイハイ、わたくし共で出来ますよ。ぜひ、おまかせ下さい。」

って言うに決まってる。


けど、RCが得意な人や、新築や増築しかやったことの無い人には頼みたくない。強度的にも不安はあるから、そちらにも明るい人がいい。「既存不適合」がいろいろありそうだから、それも(そして適切な解決方法も)わかる人がいい。


・・・いろいろ考えると、ますます探せなくなってしまいます。


そういうことが、ハッキリわかる仕組みがほしいな、と思ったのでした。

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建築とは。

技術とは。

建築家とは。

技術者とは。

建築士とは。



昨年来の「耐震偽装」問題を発端に、いままで曖昧であった問いが、今、問われているのだと思いますし、きちっと定義していかなければならない時代になってきていると感じます。


(「技術士法。」おわり。)
posted by けろ at 12:28| Comment(2) | TrackBack(0) | 建築士制度 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
けろさん、毎度とてもためになる記事、じっくりと読ませて頂いております。

【例】でだされているような相談、ほんとそうですよね・・・なんというか、いわゆる【直営】できる人っていなくなってると感じます。ん〜直営っていわないんでしたっけ・・・?要は【現場監督さん】レベルの仕事ができる人というのか。
責任の問題や取引の問題、色々な問題があると思います。
あとは、そういった【プロデューサー】に関して価値を感じ、その【報酬】を相談者も払うという意識があるか、ということも大きな問題だよな、、、と色々と思うときがあります。

ちょっと話がそれてしまいました。すみません。
Posted by Rayno at 2006年11月21日 21:07
●Raynoさん

> あとは、そういった【プロデューサー】に関して価値を感じ、その【報酬】を相談者も払うという意識があるか

ぜひとも、払っていただきましょう。
というか、そういうふうに仕事しないと、食ってけなくなりますよね。

実際には、コンサルティングの仕事はなかなか取って来れないですけど。
Posted by けろ at 2006年11月22日 00:27
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