高価なコンピュータ類が水をかぶったら、大変ですから。
電算室に限らず、水がかかったら困る場所の設備には、注意が必要です。
たとえば、その室の天井内には、液体の流れる配管を通さないようにします。
上の階に便所などがあると、どうしても天井内に給排水管が出てきてしまいますから、そういう用途の室を持ってこないようにします。
電算室内の空調も、たとえばパッケージ形空調機を天井カセットで設置するようなことは避けます。
フロン冷媒はともかく、ドレン管内のドレンが漏れた場合に、室内で水損が生じる危険性がありますから。
ドレン管って、結構細かったりして、また勾配がちゃんととれていなかったりして、また埃などが詰まったりして、漏れることも時々あるのです。
ですから、なるべくリスクを避ける、という意味で、電算室などの天井内にはそのような配管を設置しないのがベストです。
当初そのようなことを考慮していなくて、あとから仕方無しに、ドレン管の下に「漏水受け」の樋を通したりすることはありますが、飽くまで次善の策です。
別に空調機械室を設けて、空気を送って空調するのが確実ですし、電算室内に設置する場合には床置形にして、床置き空調機の周囲を「防水提」で囲むようにすることもあります。
防水提内には、漏水検知装置などをつけておいて、万一の際にも早期発見してすぐに対処できるようにします。
電算室の上が、浴室だぁ!
なんて言う場合、もう、プランニング上どうしてもそうせざるを得ない場合には、どうしましょうか?
例えば、階高を上げて、その部分は二重スラブにして、給排水管類は二重スラブ内を通すようにすることもあります。
意匠的にプランを再考するのが良いのか、設備的に工夫することで十分なのか、構造的に対策をするのか。
その辺のところを的確に判断して、最善の方策を採用する。
「建築士」に求められる「最大公約数的計画能力」が、発揮される場面です。
大して面倒なことではありません。「想像力」がいるだけです。
便所の下が電気室だと。もし、給水管が漏れたら、どうなる?
高価なキュービクルが水をかぶって、全館の電気が数日間にわたって使用不能になる危険性がある。そのリスクは、許容できるだろうか?
(もっとも、こういうプランで何らの対策がない場合は、良心的な確認検査機関であれば、ちゃんと指摘してくれると思いますが。)
便所の下が、厨房。もし排水管が漏れたら、どう?
滅多に起こりそうに無いことだから、目をつむっておく?
工事費が安く済むなら、オーナーさんも許容してくれる?
・・・この辺は、考え方次第ですが。
およそ、「配管は漏れる。」と考えておいたほうが、無難です。
ものすごく厳重な施工管理をしているはずの、原子力発電所などでさえ、漏れたりするんですから。
工事費も工期も厳しくて、監理者の目も行き届かない現場であれば、「絶対に漏水は起こらない」とは、言えないわけです。
当然、そういう室の消火設備は、水系以外のものを計画します。
火事は逃れたけど、消火のためにかけた水でダメになった、じゃシャレになりませんから。
(「電算室など。」終わり。)
・他記事のコメントで質問がでていたので、触れてみました。
最初は、事務棟の一角を区切って電算室にしていました。
当時のコンピュータは、図体もでかいのですが、今よりずっと熱に弱い。
動作保障温度+5度〜+30度程度の表記で、今とそれほど変わらないように見えますが、実際はずっとシビアです。
低い方は、機械自体が熱を出すのでさほど問題ないのですが、
高い方は、室温が30度を超えると、ほぼ100%の確立で熱暴走を起こします。
社長室にもない大きなエアコンが、常時うなっていました。
ある時、外装がガラス張りの新社屋を建設して、集中式と言うのでしょうか、全館一括の空調が入りました。
電算室もその新社屋へ移動です。
電算処理が遅れて、休日に稼動しなければならない時も、夏場だと全館に冷房を入れるしかありません。
電算機のことなど知らない役員が、「電気の無駄遣い」と文句を言っていましたが、数千万円するコンピュータを稼動不能にすることを思えば電気代など安いものです。
時あたかもオイルショックで省エネが叫ばれるようになったころ。
電算化の人間は、休日出勤のたびに肩身が狭い思いをしてました。
その新社屋で、唯一救いだったのは、
電算室が陽のあたらない「裏」側に配置されていたこと。
陽当たりの良い「表」側にあった社長室、役員室では、建築早々から、カーテンを閉めたくらいではエアコンも効かないくらいの高い室温と、雨漏りに悩まされていましたが、電算室は被害なし。
これが逆だったら、高温と雨漏りで、高いコンピュータがどうなっていたことやら・・・。
しかし、新社屋なんて高い買い物だったでしょうに、もう少し考えて設計できなかったものか。
ま、ガラス張りのビルを建ててしまってから、「省エネ」なんて言う会社でしたから、程度は知れてましたが・・・。
社長室の件は、「ガラス張り」という安直なデザインの追及が招いた笑い話(悲劇?)ですよね。「温室」を作ってるんだから、暑くて当たり前なのですが。