1階と2階が別々になっている借家の2階を借りて住んでいました。
1階部分は、とある会社が事務所として借りていましたので、土日祭日は休みで、無人でした。
ある日曜日、朝から出かけて夕方帰ってきたその時。
水が出ませんでした。
「やばい、かも。」
どうやら、水道を凍らせてしまったようです。
冷え込む夜は、水抜きをするのですが、昼間はあまり抜きませんでした。
でも、その日は昼間も結構冷えたままだったのです。
2階ですから、給水管は1階部分を通過して来ています。そして、その1階部分は、2日間休みだったため冷え切ってしまい、わが家に来ている給水管が凍ってしまったようなのです。昼間だったので、油断してしまいました。
ああ、設備屋のくせに。
なんたること。
医者の不養生。
紺屋の白袴。
設備屋の水道凍結。
・・・情けないっす。
早速水道屋さんに電話。
でも、そういう時って、だいたい他でもやってるんですよね。
「今、混み合ってまして・・・。あさってにはうかがえます。」
何件か電話して、一番早そうなところにお願い。
でも、2日間は耐えなければならないのです。
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飲み水は、ペットボトルで売っているので、何とかなります。
風呂は、まあ我慢しましょう。
少なくなってきたとはいえ、銭湯もあります。
洗濯も、その間は仕方ありません。
それこそ、コインランドリーという手もあります。
問題は、トイレでした。
流す水が無くては、水洗トイレは使えないのですから。
液体だけならともかく、固体や紙は、水で流さないといけません。
とりあえず、1回分の水は、ロータンクにたまっています。
が、それだけで2日間もたせることは不可能。
なるべく出先(スーパーとか・・・)で済ませるとしても、それだけではムリです。
とにかく、トイレに流せる水を確保する必要があります。
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まず、考えたこと。
「雪を溶かして使おう。」
さいわい(というか、凍るぐらいだから当然)冬。
外に雪はたくさんあります。 (「いいだけある」と言う。)
おもてから雪をとってきて、浴槽に入れます。
「これで、しばらくは安心だ。」
と思ったのでした。
・・・だいぶ時間が経って。
「雪のまんまだ。」
雪というのは、結局「氷」。
氷が溶けるには、相当な熱量を要するわけです。
氷1gが水1gになるには、融解潜熱分の79.7calを与えてやらなければなりません。
1リットルの水(約1kg)を作るには、79.7kcalの熱が必要。
旧型の隅付ロータンクに12リットル貯めるためには、
79.7kcal/L×12L=956.4kcal
しかも、この熱量ではできた水は0℃です。
水の温度を1℃上げるには、1リットルあたり1kcal必要ですから、せめて5℃の水にしようとすると、
956.4kcal+12L×1kcal/(L・℃)×5℃=1,016.4kcal
の熱が必要です。
国際単位系でいくなら、
1,016.4kcal×4.19kJ/kcal≒4,259kJ
ということになります。
天然ガス(13A)の発熱量が、ガス1m3あたり約46,047kJですから、
4,259kJ÷46,047kJ/m3≒0.09m3=90L
要するに、トイレ1回分の水をつくるのに、ガスを約90リットル燃やすだけの熱量が必要だ、ということになるのです。
風呂場に放置しておいただけでは、なかなか溶けないのも当然です。
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昔のストーブなら、上にやかんでもかけておけば湯ができましたが、FF温風暖房機ではそうもいきません。
仕方ないので、台所のガスコンロに大鍋を乗せ、雪を加熱して湯をつくり、それを浴槽の雪にかけて、水をつくりました。
たくさん作ることはあきらめ(ガス代が大変になるので)、ある程度つくった水をバケツにくんで、トイレに置いておき、使用後に流すようにしました。
なるべく「大」は出先で済ませ、家で流すのは「小」だけにして、何とかしのいだのです。
指定の日時に水道屋さんが来て、下の事務所部分に立ち入らせていただいて、水道管を器具で加熱して溶かし、無事通水したのでした。
やれやれ。
この件で、潜熱の大きさを実感しましたね。
だからこそ、「氷蓄熱」なんてことが成り立つわけで。
固体→液体の潜熱でも大きいのですが、更に液体→気体の潜熱は大きく、だからこそエアコンが使えるわけですし、「蒸気暖房」も利用価値が高いわけです(蒸気は扱いが面倒なので廃れてしまってきましたが)。
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余談ではありますが、この件で、「トイレで流す水」の重要性もよくわかりました。
理屈では知っていましたが、やはり、と。
阪神淡路大震災で、「トイレが使えない」というのが問題になっていました。
便器があっても、それを流す水がなければ、また流す先の配管が壊れていれば、汚物を流せない。
流せないと、汚物が山になり、その便器はすぐに使えなくなる。
ですから、避難所になるような公共施設には、飲料水の他に、トイレで流すための水を確保するように計画します。
耐震性を高めた受水槽や高架水槽に、地震感知器連動の遮断弁を設置して、地震が起こったら水槽の水が他に流れていかないように、水を守ります。
もちろん、地震の揺れに伴う中の水のゆれ(スロッシング)で水槽自体が壊れないように補強も行います。
流す先の公共下水道が壊れていても当座しのげるように、避難所開設時に使用する便所の下部には十分な深さのピットを設けておきます。
避難時には、排水管をピット内で切断して、ピットを一時的に「汚水槽」として使用します。そうすれば、汚水槽が一杯になるまでは、便所として使用することができます。
ピットには釜場と上部にマンホールを設けておきます。バキュームカーで吸い取れば、便所は機能し続けますし、水中ポンプを放り込めば下水復旧時に汚水を排出しやすいですし。
小型の発電機と、発電機用の燃料が常備されていれば、なお安心ですね。
・・・ここまでやるくらいなら、「バイオトイレ」の方が経済的で、合理的でしょうけど。
http://www.seiwa-denko.co.jp/
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ともかくも、寒冷地にお住まいの方、水道凍結には、気をつけましょうね。
http://www.city.sapporo.jp/suido/c07/03.htm
(「凍った。」おわり。)
【関連する記事】
寒さ慣れしていないので、ちょっと雪が積もっただけで、交通は大混乱。
去年、中部国際空港では、積雪による閉鎖騒ぎがありましたが、この時、中部空港に滑走路用の除雪車が常備されていない事がばれてしまいました。
積雪が予想される時だけ、事前に他所(レンタル会社でしょうか)から除雪車を運んでくるそうなんですが、この時は事前の準備が間に合わず、除雪車を要請しても、積雪で道路が通れなかったというお粗末。
一般家庭でも、不慣れから来る失敗は数多く、
よくやるのが、道に積もった雪を溶かそうとして、お湯をかける失敗。
熱量の関係で、ちょっとやそっとの「湯」など、あっという間に氷になってしまうだけなんですが、フツーの人に物理の計算などできるはずもなく、雪と戦った経験もないので、甘く見てしまうんですね。
結果、積雪で「ちょっと滑って危ない」だけだった路面が、「とても危険なスケートリンク」と化してしまってから慌てても、もう手遅れです。
後はお天道様に祈るしかありません。
寒い地方の方からすれば笑い話でしょうが、普段経験がないというのは実に恐ろしいことです。
転倒で何人ケガ、なんてニュースになっていますし。
新潟あたりで、道路の雪を溶かすため水をちょろちょろ流す、というのをテレビで見ました。
こっちだと、スケートリンクできあがりです。
何でも、シベリアでは冬季は水をまいて道路の舗装代わりにするとか(真偽不明)。
「ところかわれば・・・」です。