しばらく前からイマイチだったけど、いよいよ調子が悪い、とのこと。
「真空ヒーターの具合が悪いんじゃないか」との見解らしい。
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この建物では、真空ヒーターで水を温め、貯湯槽に湯を貯めて、各所に給湯している。
貯湯槽の下部のぬるい水や湯を使ったあと補給された水をヒーターに送り、暖めたものを貯湯槽に戻す。(一次循環)
貯湯槽上部には、常に熱い湯が貯まっているので、槽の上部から給湯管を取り出し、各所に送っている。(給湯管)
給湯管内の湯は、使用されないでいると徐々に冷めるため、少量ずつ貯湯槽に戻して、再度加熱する。(返湯管)
そういう、ごく当たり前のシステムである。
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なお、「真空ヒーター」は、国交省の呼び方だと、「真空式温水発生機」である。
俗に「ボイラ」と言うけれど、正確には「ボイラ」ではない。
「ボイラ」は法的に区分が決まっていて、伝熱面積と最高使用圧力によって、ボイラー技士の資格者が取り扱うこととなっている。
本来の「ボイラ」は、内圧が高く、運転操作を誤ると爆発した。
その勢いで、ビルが丸ごと吹っ飛ぶこともあった。
そのために、資格者による操作が必要とされている。
しかし、「真空ヒーター」は、缶体内部が大気圧以下のため、原理的に爆発の危険がない。したがって、法的には「ボイラ」ではない。
もひとつ脱線するが、この場合の貯湯槽は、俗に「バカタンク」と言う。
「ただ貯めとくだけのタンク」の意。
バカでないタンクとは、タンクに加熱コイルが挿入されているもの。
蒸気や他の温水などで槽内を加熱することができる。
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さて、症状は、と言うと、
「貯湯槽がなかなか焚きあがらない。」ということであった。
貯湯槽に取り付けられている温度計の指示が、なかなか定常温度に達しない、という状態である。
以前なら、ヒーターで加熱されていくと徐々に温度が上がり、定常温度に達するところが、えらく時間がかかる、ということである。
コレがバカタンクである以上、原因はタンクより上流、すなわち一次側にあるに違いない。
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考えられる原因。
1.貯湯槽に接続している給湯一次配管かバルブが閉塞しかけている。
2.給湯一次ポンプ(ヒーターと貯湯槽との間を循環させるポンプ)がうまく働いていない。
3.真空ヒーターがうまく加熱できていない。
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まず、貯湯槽底部の湯抜きバルブを開き、湯をどんどん抜いてみる。
すると、その分を補うために補給水が槽に入ってきて、槽下部の温度が下がってくる。
それがヒーターに送られると、ヒーターが自動着火し、運転を始める。
ヒーターのセンサー類などは、働いているようである。
次に、貯湯槽周囲の接続配管をチェックする。
ステンレスクラッド鋼板の槽の配管取り出しフランジに、あろうことか鋼管が直接接続されている。で、異種金属管の電食により、フランジ部分が良くさびている。が、接続バルブは開閉できるし、管表面の温度(手ざわり)からしても、完全閉塞をしている様子はない。
配管のどこかが詰まっているとなると、調べにくいが。
あいにく、この建物の設備には、計器類が少ない。
給湯一次循環系には、何もついていない。
流量計でも付いていれば、定格の流量より少なければ、管のどこかが詰まっていて流れにくくなっていると推定できる。
圧力計でも付いていれば、差圧の大きさによって、同様に詰まりが推定できる。
幸い、循環ポンプ本体のフランジ付近と、ヒーターの接続フランジ部分に、小口径の接続口があったので、それぞれプラグをはずして、圧力計を設置した。
(と言っても、自分でやったのではなくて、メンテナンスの方が付けてくれたのであるが。)
すると、ポンプの揚程に比べて差圧が大きいことがわかった。
一次配管系のどこかで抵抗が大きくなり、流れが悪くなり、流量が低下しているようだ。
だから、貯湯槽内がなかなか温まらないのではないか。
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もう一つ、判断材料があった。
動力盤面の電流計である。
・・・と思ったら、この電流計は壊れていて、まともな指示を出していない。
ダメだぁ。
と、メンテナンスの人がつけている月報のことを思い出した。
月報を見てみると、ちゃんと給湯一次ポンプの電流値が書かれている。
月に一回、テスターで電流値を測って記録していたのである。
やったね。
すると・・・。
2ヶ月前から、このポンプの電流値がグンと高くなっている。
やっぱり、負荷が掛かっているようである。
メンテさん、せっかく、テスターまで使って調べてるんだから、「記録しておしまい」にしないで、「あれれ?」と思って欲しいんですけど。
そしたら、もっと早めに対処できますから。
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で、あとは、ポンプ本体を取り外して流路を点検。異常なし。
フランジ接続になっていて一部取り外せる配管を外して内部を点検。内面に薄い赤錆があるもののいたってきれいで異常なし。
という順番に見ていき、ついに真空ヒーターの加熱コイルしかない、というところまでたどりついた。
加熱コイルの接続フランジ部分を取り外し、コイル内を見てみると・・。
コイルの中が、詰まっていた。
鉄製のコイルヘッドの内面に施してあったライニングが、べろぉ〜ん、と剥がれて、流路を塞いでいた。
流れることのできる部分は、ごく僅かであった。
結局、このコイルヘッドを交換することと相成り、一件落着。
結構手間を食ってしまった一件であった。
ワタクシがもっと頭が良ければ、もっと早くに決着したのであろうが。
ま、この程度が限界のようで。
あ、メンテさん、フランジをはずさなくちゃならないんだから、フランジガスケットはあらかじめ用意しておいて下さいね。
せっかく、関係者みんなの都合を合わせて夜集まっているのに、
「フランジガスケットを用意してないんで、今日ははずせません。」
じゃ、困ります。あちこちはずして調べようとして、集まってるのに。
結局2日間にわたって集まらなきゃならなくなっちゃいました。
(「湯が、ぬるい。」おわり)
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