1.各部分を最適化する。
それぞれの部分にとって、最も良い状況を作り出すべく、システムを整えます。
2.全体として最適化する。
システム全体として、最も良い状況を作り出すべく、システムを整えます。
これらは、どちらもある程度必要なことですが、どちらかに偏ると弊害が多く出てきます。
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たとえば、冷暖房について考えて見ます。
建物の各部屋で、十分に冷暖房が行われれば、室内に居る人たちは快適です。
でも、中間期など、ある部屋は暑くて冷房が必要で、他の部屋は寒くて暖房必要という時期があります。
この場合、各室で最適な状態とするために、冷房系統と暖房系統を両方整備して、どちらでも自由に使える、というシステムにしたら、どうでしょう。
冷熱源と温熱源を設置し、冷水管と温水管を別系統にします。
(冷水、温水の各往復で、計4本の配管網が設置されるので、「4管式」といいます。)
(実際には、ドレン管もあるので5管なのですが。)
循環ポンプも、完全に別々にします。
各室のファンコイルユニットには、冷房が必要な場合には冷水を、暖房が必要な場合には温水を流入させ、冷暖房を行います。
こうすると、部屋ごとに好きなように冷暖房を行うことが出来ます。
しかし、冷温水機を使用した冷温水管システムに比べると、費用や設置スペースが倍近く必要になります。各部分を最適化することにより、全体システムとしては、「最適」とは言えなくなります。
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では逆に、全体システムとしての最適化をめざし、冷温熱源を一体化し、循環ポンプも1台、冷温水管による冷水温水切替のシステムとしたら、どうでしょうか。
この場合には、冷温水管内を流れるのは、冷水か温水のどちらかです。
ですから、建物全体として、冷房か暖房のどちらかしか行うことが出来ません。
春先に温水から冷水に切替してしまうと、その日以降、暖房は出来なくなります。
「まだちょっと薄ら寒い」と思っている人がいても、暖めることはできないのです。
逆に、切替前であれば、いくら暑い日が来ても、冷房することができません。
暑くても、窓を開けるなどして、がまんしてもらうしかないのです。
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実際の設備においては、建物のグレード、かけられる費用、必要性などに応じて、システムを選んでいくことになります。
高級ホテルの場合には、宿泊客に「がまん」を要求するのは難しいでしょうから、
費用をかけてでも自由度の高いシステムとすることでしょう。
安いホテルなら、安いんだから、多少の暑い寒いはがまんしてもらっても差し支えないでしょう。
精密機械工場や手術室など、室内環境維持の必要性が高い場合には、他の部分を節約してでも、要求環境を実現するようなシステムを組みます。
そのあたりの判断、見極めが、「設備プランニング」だったりします。
(「部分か、全体か。(2)」につづく)