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「生体模倣工学(biomimetics)」という言葉があります。
「生体の機能するメカニズムを真似(mimic)して工学的に再現する研究分野」のことなんだそうです。
一歩進めて、生物学の知見を工学的に模倣し、より機能的な製品、システムを構築するために、応用することが可能かと思います。
設備に応用した「生体模倣設備」は、「究極の設備」であろうと思います。
生体並みの実現は、相当困難なことではありますが、ごく一部からでも、部分的に応用していくことにより、設備(に限らず)技術の更なる向上につながることと思います。
実際には、人体と建物とでは、スケールが1桁から2桁違いますので、同じ原理、同じ機構を使用することができない面も多々あります。生体を構成する細胞と、設備を構成する機器・部品類とでは、更にもう1〜2桁、スケール差がありますので、物理的・化学的に実現しえない事がらも多々あります。
けれども、その上で、工学が生体に学ぶことのできる要素は、まだまだたくさんあると思うのです。
決してミクロの世界だけではなく。
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各種設備を統合して適切に制御する「自動制御設備」「中央監視設備」は、神経系統及び脳による生体統合の機能を模倣することによって、更に発達していくことが可能でしょう。
燃料電池による、個別分散型の熱電併給方式と、そのネットワーク構築なども、生体に似たシステムと言えませんか。大規模発電所から送電線網を経由して消費地まで運ぶというのが通常の発送配変電システムですが、生体に近いのは分散型のほうです。
電力ケーブルを通じて、通信も行う、というのも、1つの設備を他の目的に使用するという意味で、生体模倣的要素があると思います。
宇宙船の中では、シャワー排水や乗員の排泄物から水分を抽出して飲料水として再利用されます。閉じた系では、生体模倣を行わざるを得ません。
(しばらく前、アメリカで「バイオスフィア2」実験が行われましたね。)
「冷温水管」という場合、夏は冷水、冬は温水を流して、1つの系統にまとめたものですが、これは中央熱源室から冷水または温水を供給するだけのシステムです。一方、「熱源水」を流して、各室ごとに個別に水熱源ヒートポンプユニットを設置し、個別に熱源水との熱の交換を行う場合には、生体模倣的要素が多分にあると言えます。配管の中を流れる水は、血液のような役割を果たせるわけです(ただし熱に関してのみですが)。
登録された情報に基づき、内部の人間と外部の人間とを区別し、セキュリティを向上させるシステムは、免疫システムを参考にすることによって、より確実性が高まるかもしれません。
ツタや落葉樹を利用して、夏と冬とで取得日射調節を行うのは、生体模倣的かつ、生体そのものの性質を利用したものでもあります。
(思いつくまま、とりとめもなく並べてしまいましたが・・・・・。)
一般的に、生体の各要素は非常に複雑かつ精巧に機能しています。
工学(もちろん設備を含む)にとって、生体に学ぶべきことが、まだまだたくさんあります。
(「生体模倣設備」おわり)
※ 荒唐無稽な記事にお付き合い下さいまして、ありがとうございます。というか、すみません。