飲料水を送るために → 給水設備
雑用水を送るために → 雑用水設備
排水を排出するために → 排水設備
湯を送るために → 給湯設備
火災を消すために → 消火設備
人間と給排水の接点 → 衛生器具設備
排水処理のために → し尿浄化槽設備
人荷の運搬のために → エレベーター設備、エスカレーター設備
暖めるために → 暖房設備
冷やすために → 冷房設備
呼吸のために → 換気設備
温冷熱の製造のために → 熱源設備
融雪のために → ロードヒーティング設備
電気を受けるために → 受変電設備
機械運転のために → 動力設備
照明のために → 電灯設備
音声を伝えるために → 放送設備
・・・・・挙げていくときりがありませんので、このくらいにしますが。
これらは、それぞれの目的のために、別々のものとして造られます。
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給水設備は、水道本管から水を引き込み、タンクに貯め、ポンプで加圧し、
給水管を通じて、建物各所に水を送ります。
温水暖房設備は、熱源で造られた温水を、ポンプによって送り出し、配管を通じてそれぞれの場所に供給します。熱を使用し温度の下がった温水は、配管を通じてふたたび熱源に戻されます。
冷房をするためには、冷房用のシステムを造らなければなりません。
井戸水を使おうとすれば、通常の給水設備とは別に、井戸の設備を造らなければなりません。
「排水」の場合も、一般的な排水のほかに、雨水排水、厨房排水、伝染病棟の排水、放射性排水、現像液廃液、浴槽排水(髪の毛などを含む)、などなど、その種類が違えば、設備的に違う対処をしなければなりません。
何かしようとするたびに、別の設備をシステムとして組み上げることになります。
かくして、各種設備の整った大規模な建物になると、機械室も、パイプシャフトも、ダクトスペースも天井内も、ピット内も、たいへんにぎやかになってきます。
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一方で、生きものの「からだ」には、違う面があります。
心臓が拍動し、血液を循環させる。
という部分を見ると、ポンプが温水を送り出して循環させているのと似ていると感じられます。
しかし、ある意味恐ろしく違うのです。
心臓は、拍動します。一般的なポンプとは相当に機構が違います。
拍動するからこそ、体内の隅々までコロイド状の血液を送ることができます。
心臓は、一生モノです。100年以上、動き続けることができます。
建物なら、増築増築を繰り返すと、その都度ポンプを交換して、吐出流量と吐出圧力をアップしなければなりませんし、ポンプに送る電力もだんだん増やさなければなりません。
生き物は成長します。心臓は成長に合わせて、自ら成長し、能力をアップしていきます。
からだの大きさにあった吐出量と吐出圧力、拍動数を自己設定します。自らのエネルギーは、自らが送り出した血液中の栄養分から、冠状動脈を通じて得ていきます。
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血管は、必要に応じて伸びていきます。必要流量に応じて、太くなっていきます。
からだの成長に遅れて1年後に血管が成長、では間に合いません。
怪我をしても、自己修復します。
血管を構成する材料(細胞)も、随時入れ替わって新しくなります。
古い材料は取り除かれます。
「その作業中には、1週間血流停止」なんてことはなく、常に使いながら、補修しながら、生きています。
血管は、血圧に応じて、伸縮することもできます。それによって差圧調整し、からだ全体に血液循環が滞りなく行われることに役立っています。
(その機能が失われるのが「動脈硬化」ですね。)
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血液は、どうでしょう。
血液は、からだの各細胞に、水分と栄養分を送ります。
さらに、各細胞で生じた老廃物を除去します。
筋肉で作られた熱も、体の各部に送ります。それで、体温が保たれます。
どこかに「熱源器官」があるわけではなく、全身の各所で熱が作り出されます。
呼吸によって得た酸素を、各細胞に送り、各細胞で生じた排気ガスを排出します。
酸素や二酸化炭素を、気体のままで搬送するのではなく、血液の成分に溶かしこんで運んでいます。気体のまま運ぶよりも容積が小さくて都合がいいですし、血液が分離せずに済みます。
血液中に異物(最近など)が入り込んだときには、それを取り除く仕組みも整っています。
培養液と言えるような、細菌繁殖に有利な温度なのに、腐りません。極めて衛生的。
いわば、セキュリティ万全。
血管が破れても、管壁をふさぎ、修復する成分も入っています。
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もしも、生き物のからだのような設備ができたら、どうでしょう。
(「生体模倣設備(2)」につづく)