2006年07月29日

その穴、危険!(3)

(「その穴、危険!(2)」からの続き)


怖いのは、「プレストレストコンクリート」の場合。

鋼線を使ってコンクリートに圧縮力を与えて強度を出しているので、これを切ってしまうと、「アウト」です。

だから、プレストレストコンクリートの構造体には穴を開けてはダメです。


でも、たぶん設備屋さんにはパッと見てもわかりません。

「図面を見たらわかるでしょ」
「スパン飛んでんだから、あったり前でしょ」

と言われても、多分、わかりません。

設備改修をする約15年後に、きちっと図面が残っている保証もありません。
見てわかる保証もありません。


ですから、プレストレストコンクリートの梁には、表示をしておいたほうが、より安全です。というか、しておかないと危険です。

「この梁、危険! 穴を開けると建物が崩れても知らないぞぉ!」って。

「これに穴をあけた人は、賠償金を払った上、この建物を建て替える義務があります!」とか。

まあ、表現はおまかせしますが。
重要性を伝えることさえ出来ればOK。


「直接手を触れないで下さい。やけどの恐れがあります。」って、いかにも熱そうなモノにも書いてありますよね。危険な可能性のあるものは、「くどいくらい書く」べきなんじゃないかと思うのです。


耐震壁なんかだって、そうです。
隅っこに小さくでも「耐震壁」って表示しておけば、建物利用者も、

「おお、これが耐震壁かぁ。なんか、安心。」と思ってくれるかも知れません。


図面その他にも、わかりやすいように明示しておいたほうがいいですね。
穴をあけても大丈夫な部分。あける場合の条件。
絶対にダメな部分。


素人が見てもわかるように」明示したらいいんじゃないかと思うんですけど。


建物を末永く、健康に使うことができるように。


じゃないと、事情を知らない設備屋さんや電気屋さんが、うっかり穴をあけてしまいかねません!


設備屋さんや電気屋さんは、建築の人と違うルートで業界に入ってくることが多いので、「建築」については知らないことも多くあります。経験を積みながら習得していくのですが、ということは、現場を受け持つ代人さんによっていろいろあるわけです。

経験を積んだ人で今までプレストレスト構造体に接したことのない人だと、RCの経験で「大丈夫、大丈夫」と思ってしまったり。

経験の少ない人だと、一般論で「梁にコア抜いていいですよね」って上司にきいて、「100φならいいべさ」とか返事を受けて、安心して穴あけちゃったり。
(100φだって、よくねぇべさ。)

オーナーさんが、自ら手を下すこともあるでしょうし。


柱や梁に、致命的な穴を開けても、それですぐに建物が崩れることはほとんどないでしょう。

でも、地震が起こったときには、壊滅的打撃を受ける可能性が高まります。
「長く住んでるけど、いままで大丈夫だったよ」は、通用しませんので。




って思うんですけど、いまだかつて、そんな表示をしてあるのを見たことはありませんが・・・。

(「その穴、危険!」おわり)
posted by けろ at 19:07| Comment(2) | TrackBack(0) | 設備一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
けろさん、おひさしぶりです。

このけろさんの発想面白いですね。
設備と構造のことを伝えるためのデザインっていうのを暗中模索していますが、単純に耐震壁には「赤」を塗る。その色に重要な意味を持たせてその後にデザインへと修練させていくような発想ができないか苦心しています。

けろさんのブログとても刺激されます。

ありがとうございます。
Posted by 17 at 2007年12月16日 15:45
17さん、こんにちは。
ご来訪ありがとうございます。

建物の一生のうち、1度や2度は設備の全面改修がかかります。
床や壁のコア抜きは不可欠です。

ワタクシが計画する場合には梁は絶対に抜かない図面にしますが、「納まりを重視して梁を抜くのが標準」だと言われる所(官公庁でさえ)も少なからずあるわけです。

息子の通う小学校でも、梁に何本もコアが抜かれていて(どうみてもスリーブではなく、改修時に開けたコア)不安に思ったことがあります。

プレストレスト梁を採用した物件の設計時に、記事のようなことを提言しましたが、「わかるから大丈夫」と一蹴されてしまいました。

「だぁかぁらぁ〜〜、わっかんないんだって!」
なんて、突っ込めませんでしたが。
Posted by けろ at 2007年12月19日 09:43
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