2006年06月14日

設備は、目的で決める。

最近、マンションなどで「受水槽をなくす」工事が多く見られます。


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一戸建ての住宅なんかは、「直圧給水」と言って、水道本管から分岐してきた配管を直接(もちろん、メーターをはさみますが)供給しています。

でも、ある程度の使用水量がある建物は、「受水槽(じゅすいそう)」という水槽に一度ためておいて、ポンプで各所におくってやる必要がありました。いちどきにたくさん使用されると、水道本管の水圧が下がってしまって、他で水が出にくいなどの障害が起こる恐れがあったからです。


しかし、水道施設も充実して、ある程度の量なら大丈夫になってきました。

ただ、本管水圧だけでは3〜5階くらいが限界なので、それ以上の高さの場合には「増圧ポンプ」をはさむことになります。


築20年くらい経過して、マンションの給水管を交換するついでに増圧ポンプ方式に変更しよう、という状況が多いようです。

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売りは、

・水槽に一時貯めなくなるので、水道本管の水質そのままで各戸の蛇口から水が出るので、衛生的。

・「増圧」ポンプのため、水道本管の水圧の不足分だけポンプで力を加える。なので、エネルギー的にも節約になる。
 (一度水槽にためてしまうと、本管圧力が利用できないので。)


などがあります。

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一方で、官公署などでは、今まで直圧だった施設に受水槽を新設する、という工事が行われる場合があります。

なぜでしょう?

受水槽メーカーの救済のため・・・?


いえ、そんな理由ではありません。

施設を「災害時も機能させるため」なのです。

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水道直圧の場合、地震災害などで断水になると、水は一滴も出なくなります。どこかで本管が破れると、水圧が下がってしまって、地中から蛇口まで押し上げる力さえ無くなってしまうからです。

でも、たとえば避難所や、災害対策本部を置く役場など、当面の水が確保されているべき施設もあるわけです。

そういう施設では、「敢えて」受水槽を設置して普段から水を貯めておいて、いざというときに役立つ備えをしておこういうわけです。

もちろん、水槽につながっている配管が破れてしまうと水槽内の水が全部流れ出してしまいますから、そうならないような工夫は施されます。

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こんなことを説明したのは、「設備は、目的によって決める」ということを言いたかったからです。

受水槽ひとつとってみても、

・水質改善のため、受水槽を設けないという考え方。

・災害対策のため、受水槽を設けるという考え方。

の2通りがあります。


どちらが正しいとか、どちらが間違っている、という問題ではないのです。

何を求めるか」、「どう考えるか」が重要なのです。

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こと、設備に関しては、「○□△が一番!」なんてことはありません。いろんな条件を考慮して、「このあたりがいいんでないかい?」というくらいのものなんです。そして、それは時代とともに変わっていくものです。


建築プランだって、「このプランしかない、これが絶対!」なんてありませんよね。車だって、夕食のメニューだって、何でもそうです。

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いえ、人生の伴侶だけは、いつまでも「この人だけ!」でありたいものですが。
posted by けろ at 10:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 衛生設備 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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