その後、こんなことを訊かれました。
「機械室やPSの面積は、どのくらい必要か」
平面プランを考える上で、当然必要な情報だと思います。
でもワタクシにとっては、返答に窮する問いでもあるのでした。
延u当たり、機械室が何m2、PSが何m2とか、そういう目安が欲しいんだと思います。
その意図は良くわかります。
確かにそのような数値が書かれた書籍もありますし、多くの意匠屋さんはそういう数値を元に基本計画を立てておられるのだと思います。
でも、やっぱりワタクシは窮してしまうのです。
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たとえば、
・エントランスホール面積の概算法
・吹き抜け必要面積の概算法
・会議室面積の概算法
などと問われた時、どのように考えたら良いでしょう。
ひとくちに「事務所ビルのエントランス」と言っても、千差万別なのではないでしょうか。想定する立地条件、建物のグレード、借り手のターゲットなどに応じて決めるのではないでしょうか。
極端な話、エントランスホールは無くても良い。
または、1階全部がホールでも良い。
そういうことは、ありませんか?
「会議室の面積」は、どのように出すのでしょうか。
使用人数は必ず考慮すると思います。
同じ対象人数でも、下っ端社員向けの会議室と、重役会議室では自ずと面積の取り方が違うのではないでしょうか。
「会議はしない」という職種向けならば、会議室は不要になります。
人間を対象とする空間には、それぞれに応じたストーリーがあり、
リアリティがあるはずです。
わたしは、設備に関しても同様であると考えているのです。
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空調機械室には、何が入るのでしょうか。
「空調機」では、リアリティに欠けます。
機械室面積を云々言うのであれば、どんな種類のどのくらいの能力の空調機が入るのかイメージが欲しいところです。
「空調」とは「空気調和」。空気の質を調和するのです。
温める、冷やす、加湿する、除湿する、粉じんを除去する、臭気を取る、などなど、「調和」の内容は種々あります。
この建物には、何を求めるのでしょうか。
どのような空気質を目標とするのでしょうか。
どの程度のグレードで考えるのでしょうか。
水系、冷媒系、空気系それぞれの輸送量を多く必要とする計画ならば、PSやDSもその分多く必要です。
そのようなわけで「延面積当たり、設備機械室は○○%、PSは○○%」という数値は、統計上の意味はあっても個々の建築物には無意味に近いものだと思います。
人間の所在、動線、動線の太さ、グレードによって所要室や経路の面積が決まるように、流体の製造、運搬、運搬量、系統によって、必要な機械室やPSの面積が決まります。
空調換気方式によっては、DSなし、PSなし(空調用は無しでも衛生配管用は必要です)ということもあり得ます。
(ただし、そのようなビルは室内温熱環境・空気室環境のグレードは上げらないと思いますけど)
というわけで、前提やストーリー抜きでこれらの数値を問われると、とても戸惑うのです。
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ワタクシ自身、「空間構成」という領域に関し、ゼロから身に付けていかなくてはなりません。
ひとまずは、試験で求められるであろう概念を、学んでいきたいと思います。あわよくば、実務上も役立つ知識・技能とならんことを願っております。
同様に、主に意匠畑を歩いて来られた方々には、この機会に設備屋の視点をご紹介できればと思います。
何らかの参考になれば良いのですけれど、下手にそんな視点について聞いてしまうと試験の上では不利になるのかも知れません。
・そういう"下らない事"を考えていると合格プランがまとまらない
・そもそも出題者はそういう事を求めていない
その際には、悪しからず。
飽くまで、自己責任にてお願いいたします。
(「事務所ビル機械室の面積?」おわり)
私自身は、建築設備士の試験の時は、機器寸法の納まりで決定して、機械室配置は、メンテスペース、機器寸法はすべて記入しました。
本来は、その方法が正当だとは思いますが、試験でそこまで要求されるかは、私も判断できませんでした。
出題側が「統計数値で」と思っていれば、下手に機器寸法から描くとアウトかもしれませんし。
とにかく「設備のわかる」出題者、採点者であって欲しいと思う今日この頃。
「建築技術」の山本先生の記事、いいですね。
あれ読めば、オッケーじゃないでしょうか。