(社)日本建築士事務所協会連合会(日事連)の第52回通常総会において。
建築基本法議論の中に取り入れるべき支店について、三栖会長より考えが示されたとのこと。
以下、報道記事を引用します。
(北海道建設新聞 2009年(平成21年)6月24日(水曜日)記事より)
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日本建築士事務所協会連合会(日事連)の三栖邦博会長は、国土交通省が進めている建築基本法制定の議論の中に、「資格制度の再構築」と「建築士事務所の業務を対象とした新法の制定」の視点を加えるべきであるとの考えを、19日の日事連総会で示した。今後、日事連としての考えをまとめて国交省の議論に反映させる働き掛けを進める。
三栖会長は「建築基本法は理念を単に掲げるだけではだめだ」と述べ、関係する制度全体を見直す必要性を指摘した。
このうち、資格制度の再構築については「今や個人の建築士が意匠・構造・設備のすべてを設計できる時代ではない」と述べ、(1級)建築士にすべての分野を担当させようとする現行制度が「実態に合わない」と批判。その上で、構造と設備の各分野で優れた知識と技能を持つ専門家を育成し、意匠設計者が両専門家の協力を得て業務を遂行する仕組みを構築すべきとした。
新法の制定については、「建築物への複雑・高度な要求に的確に応えるには、多様な専門業務を正確かつ有効に統合する組織的な対応が求められている」とし、「個人の資格者を対象とした現在の建築士法では限界がある」と発言。そして、「建築士事務所が新築時だけでなく、ライフサイクル全般にわたって総合的に責任を負う主体に位置づけられる必要がある」と述べ、建築士法から独立して”建築士事務所法”または”設計監理業法”を制定すべきとの考えを示した。
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(引用、ここまで)
ここで示された考え方には、ワタクシも全面的に同意するものであります。
実態の把握、あるべき方向性について、的確に述べられたものと思います。
少々付け加えるとすれば、「構造と設備の各分野で」「両専門家」という表現をもう少し変えてはどうかと思います。
「構造」「設備」と一括りにまとめてしまうのには、難がありますから。
「構造の専門家」でも、S造やRC造の専門家と木造の専門家とでは違うようです(実態を詳しくは知りませんが)。架構の専門家と地盤の専門家とでも、異なることでしょう。
「設備の専門家」という人は実はあまりいなくて、「空調・衛生」と「電気」とは別々の技術者であることが多いのです。また単に「空調」と言っても、ありとあらゆる技術分野を結集した領域ですから、空調方式によって得意不得意があるもの。
また、自動制御、中央監視、防犯、昇降機、濾過、CATV、防災などなど、それぞれに業界があり、専門資格者(民間資格ですが)があります。
「設備技術」には「あらゆる科学技術」を導入しているため、「専門領域」の線引き・切り分けがとても難しいことだと思います。
ということで、ワタクシといたしましては、
「建築に関わる各技術分野で優れた知識と技能を持つ専門家を育成し、意匠設計者が各専門家の協力を得て業務を遂行する仕組みを構築すべき」
と提案させていただきたいと思います。
日事連では、国交省への働きかけを随時行ってきています。
(http://www.njr.or.jp/m01/08/081002/yobo.pdfなど)
今後の活躍に期待したいと思います。
設備業界ですか……? 「業界」としての取り組みは難しいと思います。
上記の理由により、「設備業界」という大きな括りが機能しないのです。
いろんな技術領域ごとに、小さな業界が乱立している状態なのです。
「建築」という大きな括りから、だんだん分化していったのではなく、
「いろんな技術領域」という小さな括りを、次々に建築に応用していったのが
いわゆる「設備」なんですから。
(「資格制度の再構築&設計監理業法」おわり)
この意見に対して、関連団体がどこまで、協調してくれるかが、課題でしょう。
ここら辺の議論は、いまさらという感じもしますが、新制度の運用がはじまった事に対するプロパガンダの一種という事なのでしょうか?
基本制度部会の検討内容を思い出してみても、なぜか委員の意見より、国土交通省住宅局からの改正案が毎回中心になっているのが不思議でしたね。(何の為の基本制度部会だったのでしょうか?)
単純に有識者・関係団体に国土交通省の改正案のお墨付きを与えさせる為に誘導しているような感触しか感じられませんでしたね。
それぞれに委員の意見もほとんど、構造・設備の専門技術者資格は、建築士とは分離してかまわないという事だったはずです。(一部の団体は、建築士の業務独占を確保したうえでの部分了承でしたが)
イメージ的には、国土交通省は、建築士法・建築基準法を逸脱しない範囲で、設計資格者を拡大する事しかできないと判断しただけで、建築士法上の「設計」に関しては一切、手をつけなかったわけです。
建築設備士も、一級建築士受験資格の付与以外は、従前のとおりとなりました。(結局法改正には、ほとんど関係なくなったわけです)
ここら辺は国会審議でも、ほとんど関係団体は異論をはさまなかったわけで、国土交通省に100%責任があるとはいえないという事がさらに問題です。
どんな法律でも立法されてしまったら、改正にはかなりの労力がかかるわけで、単純に国土交通省の行政指導の範囲の強化の為の法改正といっても過言ではないでしょう。
現実の運用でも、昇降機の法適合性確認に設備設計一級建築士・構造設計一級建築士の両方が必要という現状を見ても、あまりにも現実と乖離しすぎていると言わざるを得ません。(昇降機設計一級建築士をつくるか、昇降機は「昇降機基準法」を立法して、建築基準法と分離した方がいいでしょう)
このような方法で、資格者を拡大していくと、「消防(防災・防火)設備設計一級建築士」、「給排水衛生設備設計一級建築士」、「空気調和・換気設備設計一級建築士」、「電力設備設計一級建築士」、「通信設備設計一級建築士」、「計装設備設計一級建築士」・・・などどんどん増えていきますね。
消防設備士にならって、「設備設計一級建築士(1〜6類」などの方法も考えられて、ほとんど冗談のような感じになります。
まあ、後付で資格を増やすのは、ある意味新技術に対応可能とは言えるのですが。
そこまでして、本当に建築物の安全性が確保できるかというと、誰も保証できないでしょう。
あくまで、「設計」・「施工」の範囲で安全性を確保しようとしても、本来「建築主」・「利用者」・「保守技術者」なども含めて、総合的なフィードバックを行わないと、建築物のライスサイクルの中で、安全を維持するのは難しいでしょうね。
そこら辺の視点に注目して「建築基本法」を制定するのは、かまいませんが、理念だけで実践が難しくなるのは確かでしょう。
日本自体が、経済性を優先するあまり、何かを置き忘れているような感じがするのが気がかりです。
問題が、米の需給問題のようになってしまいますね。
確かに新制度が始まってしまった今となっては時すでに遅しの感もあります。
けれども、このまま国交省住宅局の思うままにさせておくと現場の混乱(と天下り先)が増大する一方だと、遅ればせながらアピールをしているのではないでしょうか。
「○○一級建築士」なんてわけのわからない(しかも実態を伴わない)慌てて作った資格制度ではなく、少々時間を要してもいいので「理念に遡った」議論を白日の下で明明白白に行っていただきたいものだと思いました。
> 何かを置き忘れている
何もかも、全部置いてきてしまったのかも知れません。
この内容から読み取れるのは、「空間構成」を一級建築士の必須能力として、「意匠・計画」、「構造」、「設備」のそれぞれの採点結果の総合点(+「空間構成」の得点)で一級建築士に必要な資質を確認するという事のようです。
「空間構成」は、一般的な意匠設計者に求められる能力なので、実質的には「空間構成・意匠・計画」、「構造」、「設備」というような採点になると思われるので、基本的はやはり意匠設計者の為の試験といえるかもしれません。
今回は、計画の要点が10問となったので、絶対的欠落事項は、各設問の解答内容で判断して、1問駄目(解答無しは欠落事項となるでしょう)でも不合格とはしないでしょう。
設計図に要求される、「構造」、「設備」はそれぞれ、それほど難しい内容ではないので、やはり「空間構成」が合否を決定するという事になりそうです。
将来構想としてあるといわれてきた、「共通問題」+「選択問題(意匠・構造・設備)」に改正されるまでは、まだまだ時間がかかりそうですね。
> 「共通問題」+「選択問題(意匠・構造・設備)」に改正されるまでは
建築設備士パターンですね。
日本国の建築に関して資格制度がどうあるべきなのか、「そもそも論」に立ち返った議論ができるかどうか。
国交省の牙城を崩せるかどうかにかかっていそうです。
ここら辺の調査報告書は、建築技術教育普及センターから、国土交通省へ提出されているはずです。(「アメリカ合衆国専門技術者登録制度」 、「英国の建築関係技術者制度」(I)公認建築設備技術者・(II)公認技術者、一般技術者、技術技能者 ・(III)公認調査士、 「国際化に対応した建築設計資格制度のあり方検討調査」などの調査報告を行っています)
米国の専門技術者登録制度(PE)や、英国の公認建築設備技術者などは参考にならないという事なのでしょうか?
現在は、そこまで検討する時間が無いという事なんでしょうね。
一級建築士設計製図の試験についての、意見の書き込みをみていると、「なぜ、構造・設備設計一級建築士が関与すべき建築物の設計を試験課題とするのか?」、「構造・設備技術者も受験する試験に、意匠設計の評価が必要か?(計画・空間構成のみの評価でいいのでは?)」など、興味ある意見もありますね。(今回「空間構成」を必須の能力として足きりを行うという事はそこら辺を考慮したという事でしょうか?)
今回の設計製図の採点基準の変更点として、「空間構成」・「意匠・計画」・「構造」・「設備」の4分野に分ける方向となったのですが、それぞれの課題の難易度と配点が「意匠」・「構造」・「設備」で均等になるとも考えられないので、結果的に従来とは変わらないとの結論になりそうです。(むしろ均等にした場合は、「意匠」がかなり不利になるといえるでしょう)
一級建築士だけで、すべての分野の設計が行えるという制度を維持しようとすれば、本来は各分野を均等に評価しなければいけなくなります。
将来設計製図の試験をそのように変えるとしたら、現在より資格学校で試験専門の教育を受ける事になり、資格学校の利益は増えるでしょうけど、建築技術者にとっては本質から乖離した試験制度になってしまうような気がします。
場当り的な改正より、本質的な改正を考えてほしいですね。
> 諸外国で認められる、建築設備技術者資格
> 場当り的な改正より、本質的な改正
おっしゃる通りです。
大急ぎで決めてしまった感のぬぐえない現行制度、
しばらく続くのは仕方ありませんから、
今一度じっくりと本質に戻って検討いただきたいものです。