2008年11月05日

環境に配慮?(3)

(2)からの続き。


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3.ウシの「げっぷ」削減で温暖化防止
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酪農で飼育されているウシ。

ウシの「げっぷ」にはメタンガスが含まれており、
それが地球温暖化を促進する要因の一つになっている。

帯広畜産大学の高橋潤一教授が、ゲップ内のメタンガス発生を
劇的に抑制する方法を開発したのだとか。

ま、確かに北の地方ではウシ頭数が人口の5倍、なんていう自治体もあるそうですから、有る程度効果はあるのでしょう。


問題は、その総量と温暖化への寄与の度合。


もしもウシのゲップが他の温暖化効果ガスに対して結構な割合であるなら、
そして温暖化に対する寄与度が高いならば、その抑制にはかなり意味があるでしょう。

発電所や工場で発生する二酸化炭素、
冷暖房や物資の輸送により発生する二酸化炭素、
その他各方面における温暖化効果ガスの寄与度に対して、
ウシのゲップ寄与度がある程度の割合であるなら、
やはりその抑制には大きな意味があるのでしょう。

ある報道によれば、ウシのゲップが温暖化に及ぼす寄与率は全体の5%だとか。

仮にこれを半減させれば全体の2.5%を削減できることになります。


「塵も積もれば……」ですから、このような内容をコツコツと積み重ねて全体の状況を改善していこう、という努力に対して異を唱えるものではありません。


しかし。


この「抑制技術」に対して特許を取得したとの由。
誰が特許料を払ってまで、ウシのゲップを削減しようとするのでしょう。
「その技術を導入しない限り罰金」なる制度でも出来ない限り、
効果は期待できません。

まして「5%の寄与」というのは全世界での話。
全世界のウシに技術導入を行うことが可能なのか。
可能としても、どのくらいの費用がかかるのか。
それを導入するのに、どのくらいのエネルギーを使用する(つまり二酸化炭素を発生する)のか。


そのあたりの検証が待たれます。


そうでないと、

「素晴らしい技術です」
「導入に50年かかります」
「導入の際に発生する二酸化炭素による温暖化効果は、
 ゲップ削減に伴う温暖化抑制効果と同程度です」

では、「単に費用がかかりました。効果はほとんどありませんでした」
で終わってしまいますから。


そもそも、ウシのゲップを減らすのと、
車の排気ガスを減らすのと、
どっちが重要でより効果が高いかと言えば
自明な気がしますが。


大手マスコミさんによる、単発・トピックの報道も良いのですけど、
なんかこう、全体像を見据えた分析、検証、解説も欲しいなぁと
思う今日この頃。


(「環境に配慮?(3)」おわり)
posted by けろ at 18:24| Comment(2) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
(1)〜(3)の感想です。
現在の環境問題に関しては、人類(もしくは、人類が必要とする生物・植物)が生存可能な環境を維持しようという事が主眼になっているはずです。
そういう意味で、エコロジーはあくまで、人類の生存の為であり、人間のエゴである事は確かでしょう。
オゾン層維持対策・地球温暖化対策が、何らかの経済活動に利用されているのも事実でしょう。
大気中のCO2濃度を下げる必要があるなら、すべてのCO2排出量に何らかの制限をかける必要があります。
現在、植物が炭酸同化作用により固定した炭素燃焼により発生するCO2や、同様に植物の消化により発生する牛のげっぷなどは規制対象外ですが、総量が問題であるなら規制対象とすべきでしょう。
現在の大気中のCO2濃度の増加が、人類の経済活動に起因するのは確かなので、経済活動自体の縮小が最大の対策であるのは確かですね。
冷房・暖房の設定温度の変更は、多少の効果はあるにしても、システム自体のエネルギー消費効率が、温度変更に対して充分な追従ができなければ意味がありません。(単純に冷房・暖房すべき部屋を減らす又は冷房・暖房の不要な建築物の設計が期待されます)
保健衛生上、必要な換気は確保しなければいけませんが、換気量の基準などの見直しなども検討する必要があるような感じがします。(日本の基準は世界的に厳しい方です)
シックハウス対策は、必要なのでしょうが、24時間換気を続けなければいけないものなのでしょうか?(危険性の周知のみで、24時間換気したい人が行えば良いのではないでしょうか?)
経済産業省、環境省、国土交通省その他関連省庁で統一した政策の立案はできないのでしょうか?(環境対策に関しては、内閣が総合立案しているようですが、関連法令等の整備が充分でないような感じがします)
マスコミに関しては、話題性でしか報道しないので、報道機関としての矜持を持った姿勢を期待したいですね。
Posted by masa at 2008年11月08日 19:00
masaさま、ご感想ありがとうございました。
お返事遅れまして申し訳ありません。

> 経済産業省、環境省、国土交通省その他関連省庁で統一した政策の立案はできないのでしょうか?

洞爺湖サミット関連でも「ウチの予算を使え」と仕事の分捕り合戦があった模様。お互いに敵視こそすれ協力しようという姿勢に無いようで。
困ったことです。


> 報道機関としての矜持を持った姿勢を期待したいですね。

仰る通りです。
年を追うごとにワイドショー化していく報道は、何とかならないものでしょうかね。

ただ、学会にしても業界団体にしても、こと環境関連に関しては「儲かる方向」に便乗している感も否めないように思えます。

ワタクシ自身は、いろんな観点でじっくり考える姿勢を持ちたいと思います。
Posted by けろ at 2008年11月11日 18:17
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