いえ、車修理用のピットではありません。
もちろん、音楽ホールのオーケストラピットのことでもありません。
建物最下階床下にある空間のことです。
普通に建物を使用しているだけでは、潜る機会はあまりありませんよね。
ワタクシは商売柄、時々もぐりこみます。
何のために?
趣味? ……いえいえ、そんなんじゃなくて。
たとえば、工事監理(補助)や竣工検査(補助)の時。
床下配管の施工状況を見るには、床点検口からちょこっと覗くだけではどうにもなりません。実際に入って見る必要があります。
たとえば、調査の時。
漏水などの調査、劣化状況調査などの際には、原因究明や現状把握のために、やはり潜り込まないわけにはいかないのです。
配管の支持、振れ止め、固定などの状況、保温・塗装の状況などを見ます。
新設ならば施工図との整合性、調査ならば設計図との差異(結構違うことが多い)。
見えるのは配管もしくは保温外装だけですが、管の種類、用途はだいたい想像がつきます。
でも、ちょっと通常と違うものが入っていたりすると、途端にわからなくなります。
時として、全く不明の管がある場合もあります。
図面や記録に残っていない管は、やっかいです。
生きてる(使用されている)のか、死んでいる(使用されていない)のか、
建築設備としての配管か、プラントなど生産設備の配管か、
どこから来てどこまでつながっているのか(途中で切れている場合も)、
ピットの奥へ奥へと追いかけていく必要がある場合も。
そんな時は、酸欠防止対策も考慮しなくてはなりません。
建物によっては、
・深すぎるピット
降りてしまうと自力では上がってこれない。
点検口をフーチンの上に設けるとか、地中梁脇に設けて
タラップを付けるとか、
対策を要しますね。
・水没ピット
ピット内の水抜き穴、水勾配、釜場と排水ポンプ、などが
無かったり不足していたり。
棒などで深さを確かめて、長靴などを履いて。
点検口脇にウエス(靴拭き用ですよ)を用意しておくと
良いです。
・通れない人通口
狭すぎて肩が入っていかない。お腹がつっかえる(痩せろと
言っても仕方がない)。
折角の人通口に配管やケーブルが通っていて人間が通れない。
・浅すぎるピット
浅すぎるので、思いきり屈んで若しくは這いつくばって行か
ねばならない。
工事する人大変。
・行けないピット
確かに配管が通っているはずなのに、到達できない。
四方が躯体で囲まれてしまっているのに床点検口もない。
床点検口の新設を要します。あけてびっくり、玉手箱!?
・ゴミピット
ピットの奥に、工事の残材、切れ端、仮設物、空き缶、
コア抜きガラが。
余ったコンクリートをダラダラ流し込んであったり。
水没ピットの水面に大量のゴミがぷかぷか浮遊していたり。
・ムシムシピット
嗚呼、ムシの巣窟。
ゲジゲジ、ワラジムシ、ムカデ、ヤスデ、クモ……。
脚の多いヤツが多いなぁ。
いや、ナメクジやカマドウマも居たか。
・ジメジメピット
妙に湿度が高い。ムシの類、カビの類がよくお育ちになって
いる。
ここも酸欠注意。
生物学的危険性が高いのです。
・モワっとピット
蒸気暖房建物のピットなどは、暖かくて乾燥したピットも
あります。
高温配管による火傷に注意。
なんてものもありますね。
一度、潜ってみておくんなまし。おもしろいものですよ。
でも、汚れても良い服装と軍手は必須。
ヘルメットをかぶっておけば、うっかり床スラブに頭を強打したり、
ピット内のプルボックスの角で頭を切ったり、
クモの巣ネットで頭部をパックしたり……。
そんなリスクを下げることができます。
(「ピット内」おわり)
冷温水管も半分ほど、水没していましたが、管径が350Aだったので、非破壊検査の結果肉厚は問題無し、外面も錆びていますが、錆びの進行速度は遅いのでしばらくは使用可能との診断結果でした。
東京都でも同様の例(こちらは配管の水没は無し)がありましたが、湧水ポンプに下水道料金算出用積算時間計の設置が義務付けられています。(東京都では、湧水も下水道料金を取られます)
建築主はなんとか止水できないかとの要望でしたが、距離が長すぎて止水は不能と報告しました。(止水する為には、ピット側壁をすべて打ち直す可能性がありました)
地下水位が高い敷地は、やっかいですね。
冷温水管が水没していては、エネルギーロスも結構なものですね。
地下鉄躯体も年々湧水が増える一方。
青函トンネルなんて、どうなってしまうんでしょう!?
地盤が低い場所はかなり地下水位は高くなっているようです。
水が入る前提でピット環境を整えるしかないですね。
ピット内は二重壁にして、排水溝を網羅、十分な湧水槽を設け、ポンプアップ。
意匠屋さんはOKしてくれないでしょうけど。
その点、土木構造物は意外と配慮されていたりしますね。