建物を基本段階から計画する際に、
概略のイニシャルコスト、ランニングコストを算出するように
求められることがあります。
用途と規模の想定程度しかないのですから、
設備屋としてはなかなか厳しいものがあります。
なので、いろいろと注釈を付けます。
「この計算は、下記の仮定・条件に基づき仮に算出したものです。
内容が異なる場合には、異なった結果となります」
「給水は受水槽+加圧給水ポンプ方式を仮定しています」
「給湯を中央式として算出しました」
「空冷ヒートポンプパッケージ方式+温水床暖房を想定しております」
「なお、ロードヒーティングは温水式によるものとし、面積を1,000uと仮定しています」
「飲食店舗は入居しない前提となっております」
などなど。
熱源を何で考えるかも、悩みどころ。
ガス会社の「空調料金」が設定されると、ガス方式が割安になり、
電力会社の「深夜電力」料金メニューが充実すると、電気方式が割安になり。
灯油の小売価格が安かった10年ほど前なら、圧倒的に灯油方式が有利。
運転条件をどう与えるかによっても、
ランニングコスト計算には大きな影響が。
どの方式が有利か、かなり恣意的に結果を作ることも可能に
なってしまいます。
もしガス会社に相談すれば、
「ガス方式が最も有利です」という計算書を作ってくれるはずです。
電力会社に相談すれば、
「オール電化が最も有利です」という結果になることでしょう。
相談先によっては、
「いやいや、灯油ヒートポンプなんか、お勧めです」と言われるかも。
どの方式になっても何の利害関係もない設備技術者が、
中立的な立場で客観的に比較検討したほうが、より妥当な結果が
出るような気がしますが、いかがでしょうか。
ま、ここまで灯油代が上がってしまうと、
そんな計算も吹っ飛んでしまいますけれども。
要するに「先のことはわからん」のであります。
(「コスト」おわり)
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けろさん質問させてください。
けろさんが受け持つ最近の物件での傾向ではイニシャルコスト、ランニングコストどちらを優先されることが多いですか。
実際に使うまでは、ランニングの痛さがわからないと言うか……。
目先の金がどうしても気になるようです。
こちらとしてはランニングも強調したいところなのですが、「先立つモノがない」ことにはどうしようもありません。
一般住宅では、オール電化が流行なので、初期投資(熱源)を皆様よくされていると思います。大きい物件とは逆です。
ですが、私の思いとしては、一般住宅では、イニシャルコストを安く(ガス)して、大きい物件ではランニングコストを安くした方がよいと思っています。