バリアフリーじゃ、ない。
ま、仕方ないだろう。
別途、設けるしかなかろう。
男性、女性の表示ではなくて
「殿」「姫」である。
殿と姫とは、少々立場が異なるような気もするが
あんまり突っ込むところじゃないんだろう。
が、近年はジェンダー関連がなかなか難しい。
今後、どうなることやら。
手洗い場は、このとおり。
石鹸ボトルが置いてあるのは
コロナ禍を経た措置であろうか。
内部の便器は木製で……なんてことはなくって
現代の陶器であり、洗浄便座も当たり前についている。
武家っぽいのは、飽くまで外観だけ。
だって、使うとき、大変じゃん?
「洋風便器」とか「洗浄便座」なんて
無かったわけだし。
もちろん水洗じゃないし。
そんなん、利用者が困る。
小便器も、個別センサーの自動洗浄。
傘掛け金具まで設けてある。
ライニング、内壁、汚垂石ほか、
現代仕様である。
そう。
ここは、一般向けのトイレなのだ。
外観の雰囲気は大事だけれども
利用者の利便性はもっと大事なのだ。
武家仕様にこだわるあまりに
ほんとうに武家の時代の「設備」にしてしまうと
現代人には利用しづらいのである。
これが、昔の建物の復元とかいう話になると
より難しい議論になる。
構造耐力のほか、冷暖房であったりトイレであったり
バリアフリー対応(エレベーターとか)であったり、
考えどころが多すぎる。
「正解」なんて、無いのだ。
そして、時代とともに移り変わる。
そんなものなのだ。
少し坂を下っていくと、
給水管と排水管とが顔を出していた。
公共水道とか公共下水道っていうのも
現代のインフラだし。
外観デザインだけでも
訪れた人に何らかの訴求を図ることができるから
これはこれで、良いんじゃないかな。
「ただの見た目だけじゃん。嘘っぱち」
そういう意見もあるかもしれないし、
「この見た目の実現のために
余計にどれだけのカネをかけたのさ」
なんていう批判も、あるかもしれない。
すべての人にとって「すばらしい」「問題ない」
なんていうモノを作り出すのは
極めて難しいと言わざるを得ないのだ。
(「殿のトイレ」おわり)