冷暖房換気ももちろんあるんだけれども
「水回り」もそれなりに需要があるのだ。
特にトイレなんて、
時代とともに要求水準が大きく変わっていくものだから。
実際に水が漏れたとかニオイが酷くなったとか、
そういう物理的損壊のほかに、
水洗化とかバリアフリーだとかジェンダー対策だとか
社会的要求によって改修されることも多い。
そんな時、まずは現状がどうなっているのか
調べなくちゃならない。
各階のトイレが平面上同じ位置にあれば、
下の階のトイレ天井内を見ることで
上の階の配管状況を確認することができる。
ある程度の年数を経ている建物であれば、
何らかのトラブルや改修を経ているはずなので
全部が全部古いまま、ということもない。
天井内なのだけれども、古い排水管はジュート巻になっている。
かな〜り、古い仕様である。
そこに、銀色の外見をもつ部分がくっついている。
古い排水管の一部を切り取って、
別の場所につなぎ直してある。
そんな感じである。
排水主管も部分的にやり変えてあるようだ。
トミジ管が見える。
耐火被覆があるから……という理由で、
トミジ管(耐火二層管)部分には保温材が被覆されていない。
排水管の他、給水管やら通気管やら電線管やら
いろんな管が見えていて、
保温外装の見た目もさまざまである。
天井内だし、別に合わせる必要も無いから、
その工事をした時点の標準仕様(昔は、共通仕様と称した)に準拠した
仕様となっているはずなのである。
古い共通仕様書を熟知しているベテランの方であれば
この仕様を見ただけで「昭和何年版仕様だねぇ」と
わかるのかもしれない。
国交省のOBでないと、
なかなかその境地には達しないのかもしれないけど。
だって、民間だといろいろあるから、
混じっちゃうんだよねぇ。
そのほかにも、
躯体に開けた貫通孔だとかその穴埋め跡だとか
吊り棒の状況だとか
改修の軌跡を示す情報が結構ある。
そんなこんなを、
改修工事とか全然無関係に
ただ好き勝手に眺めていることができたら
楽しいことこの上ない。
でも実際には、
これらの限定された情報を元に
改修計画を組み立てて、
建築や電気との調整を経て
図面化して、
積算しなくっちゃならない。
プロジェクトが進行していく様子は
それはそれで良いのだけれど
少々(?)面倒な作業でもある。
ま、特に公共事業関係であれば
「客観性」「公明正大さ」「基準に則った適正さ」
などが求められるので、
多少面倒でも細かくても大した金額ではなくても
しっかりやるしかないのである。
それも含めての「設計業務」なのだから。
いや、過言するならば
それが「主目的」であって
「設計」「積算」はそのための手段でしかないのだ。
……と、言い切ってみる。
ホントは「違うよ」っていうことなんだけどさぁ。
(「改修の軌跡」おわり)