そうそう見る機会はないだろう。
ワタクシたち、ギョーカイの者は別ですよ。
でも、他の方々にとっては
滅多にお目にかかることのない代物であろうことは
想像に難くない。
「他の方々」の中に、意匠設計者まで入るとなると
ちょっとワタクシは疑問に思うのだけれども
でも大多数の意匠の方々にとっては
「他人事」であるようだ。
設備屋さんが、配管屋さんが、
それなりにしっかりやってくれているはずのもの。
「わたくしにゃ、関係ござらん」
そんな位置づけになっている方も、
居ないわけではない。
もちろんそうではない方々もおられて
検査の際には自らの責任と権限において
ちゃんと見て、排水流下状況まで確認されることだって
あるのだ。
どちらが「良い」と考えるかは
人によるのかもしれない。
さて、とある桝。蓋を開ける。
左方向に流下する汚水桝に
3方向から合流してきているところである。
右からのものも、主管ではなくて
この桝が第一桝に相当する。
汚水桝底面にモルタルで流路を形成する
「インバート」は、職人さんの技である。
「何が流れてくるか」にもよるのだけれど
ふさわしい流路を形成すれば
流れがよりスムーズになる。
深さは、だいたい半円状の下部、
つまり配管の半分くらいになるのだが
幅だったり、合流部のカーブだったり
形状については「匠の技」によって
設けられていくのだ。
インバートを「切る」という言い方も聞く。
盛ったモルタルを切り取るわけじゃないけれど
エッジの加工とか何とかが、
「切る」行為っぽいからかな。
この桝、
まだ浅めだから比較的やりやすいだろうけれども
これが深くなってくると結構大変なのである。
人孔桝として、
それなりの径があってタラップがついていれば
まだマシなんだけれども
450φとか600φとかの径で、
なおかつ1,200Hとか1,500Hとかあったりすると
すんごく大変そうである。
もっとも、最近は塩ビ製の成形桝が一般的になった。
コンクリート桝である必要性が高くない場合には
塩ビ桝が使われるのが普通になった。
「インバートを切る技」も
無形文化財と化していくのかどうか。
大便器接続の鉛管を
絶妙なカーブで成形していく技と同じように……。
(「インバートを切って」おわり)