ま、造られてから相応の年月を経ている、
そんな建物のトイレブース内だ。
紙巻器置き場はもうちょっと何とかならんかったんかとか
気にならんこともないけれども、
まあありがちなトイレだ。
各階同じ位置にトイレがあって、
「以下同文」的な図面だったりするのだけれども、
あんまり図面を信頼しないで実際に見てみると
新しい発見があったりするものだ。
ほら。
フラッシュバルブが、違うでしょ?
高架水槽方式の給水システムである
年代を経た建物の上階では
通常のフラッシュバルブの作動水圧が確保できないのだ。
それで、低圧フラッシュバルブが設けられているのだ。
洗浄弁に至るまあるいカーブが、
このフォルムが、
我々の心をガッチリと掴むのではないか?
なんて、そんなこと思う人は
この世にあんまり居ないんだろうな。
和風便器も据えられている、この建物。
トイレットペーパーがべろんと伸びてるけど、
これは利用者の使い方の問題だから仕方がない。
「せつび」としては、
絶滅危惧種である和風便器や
バキュームブレーカー付のフラッシュバルブを
愛でるよりほかない。
しゃがんだ目前にねじ込んである「注意板」なる陶器の板。
古い建物だといちいちついているのを見かけるが、
現代はどのくらいの出荷量があるのやら。
誰も読まないよね。
読んで「ああそうか、従わなくちゃ」っていう奇特な人は
そもそもこれに反するようなことは最初からしないよね。
不思議な存在の一つである。
それはともかくとして、
この和風便器用にも、低圧フラッシュバルブは使用される。
レバーの位置の関係上、
洋風便器とは給水立上管の位置が逆になるのだ。
和便+低圧フラッシュ
産業遺産に片足を突っ込んでいる
貴重な組み合わせを
とくとご覧あれ。
(「そのフォルムがイイ」おわり)