それなりに補修しつつ、それなりに使われている。
近年は、こういうものをリノベーションして
他の用途に利用されることも多い。
1號農業倉庫 と書かれた鉄板とともに、
古そうな鉄の扉と、その上方に取り付けられた屋根。
それとともに、新しい防風板付ベントキャップが並ぶ。
シャッター用の開放装置も新たに設けられている。
内部には、小洒落た空間が造り上げられていた。
コンサートや、イベントに利用されるらしい。
昔むかしの組積造では、耐震基準を満たしていないから、
鉄骨ラーメンで完全補強を施されるとともに、
防災はじめ暖房換気照明その他
現代の用にふさわしい各種設備が付加されている。
外壁面に顔を見せていたベントキャップは
天吊ロスナイの出口なのであった。
スパイラルダクトは、黒い鉄骨に紛れて
目立つことはない。
暖房は、FF式温風暖房機。
各所に据えられているが、
積雪の多い地域で、且つ倉庫屋根の軒下にあたる面であるからか
給排気トップがかなり高い位置まで立ち上げられている。
積雪地では、その地の積雪の度合いに応じて
このような「立ち上げ」が必要になるのだ。
給排気トップの据付は、
可燃物との関係も気をつけなければならない。
給気筒と排気筒は、
暖房機の背面カバーを貫通させてある。
灯油は、床スラブに埋め込まれたコックから取っている。
給油管は地中埋設からの引き込みだろうか。
電気系は、露出の電線管とボックスによって
施工されている。
非常電源用の蓄電池設備とか、リモコンスイッチとか。
色分けが、わかりやすい。
「防災」といっても、それほどの床面積ではないため
火報と消火器くらいなものだ。
石壁と内装仕上げ兼用の木材との間にも
少々の空間があるから、
電線管は露出にしなくても良かったのかな、
という気もするが、
建築工事と電気工事との取り合いを気にしなくて済むから
これはこれで良さそうな気がする。
「断熱」というものが無いから、
省エネ性はほぼ無い。
が、常時利用される施設でもなし、
ある程度の人数が入るのであれば、
ライブで元気に動き回るのであれば、
スポットライトを多用するのであれば、
内部発熱もそれなりに期待できる、かも。
イベント開催時間をにらんで、
あらかじめ暖房機を稼働させておき、
室内を暖めておけば良いのだろう。
それだけの「立ち上がり負荷」を見込んだ
暖房能力なのだろう。
新築で、断熱バッチリの建物のほうが
「エコ」なのかもしれないけれど、
こういうリノベーション案件も
これはこれでアリなんじゃないかな。
(「倉庫でライブ」おわり)