余市郡赤井川村から、小樽市朝里へ抜ける国道393号線が
日本海に向けて下っていく手前に、「毛無峠」が存在する。
「けなしとうげ」である。無毛じゃなくて毛無。
同名の峠が長野県と群馬県との県境にもあって
辺りに木々が少なく地面がむき出しである様子から
そう呼ばれているようであるが、
赤井川村の峠はアイヌ語の「kenas(山林)」の音から取られていると
Wikipediaには書かれている。
この峠から日本海に向かって、急勾配のヘアピンカーブが続くのであるが
その直前にある毛無山からは、小樽市内を展望することができる。
標高470mの展望所があって、
車を何台も駐められるスペースも設けられている。
「毛無」の名とは裏腹に、草木が茂り、
「はげ山」感は全くない。
眼下に、小樽港が広がる。
奥の手宮地区から手前の小樽築港地区まで伸びる防波堤の内側は
漁船やクルーズ船や大型フェリーなどが行き交う
多くの埠頭を有する港となっている。
フェリーターミナル、ガントリークレーン、貨物用の倉庫、ホテルなどが立ち並ぶ。
江戸末期から明治にかけて、ニシン漁で賑わい、
明治初期には、内陸の幌内炭鉱から石炭を積み出す港として栄え、
大正時代には北海道の物流の玄関口として
「北のウォール街」と称されるほどに栄えた小樽も
現代ではかなり様相を異にしている。
旧運河周りを美しく整備した頃から、
観光都市として国内外からの訪問客を集めるところとなった。
コロナ禍により観光客が激減し、
経営難に陥った数々の飲食店、商店、宿泊施設など。
過去最大の、世界最多の感染拡大を示す第7波の最中にあって、
それでも緊急事態宣言などの制限措置が発令されていないゆえか
冷涼な気候を求めてやってくる多くの国内客で
賑わいをある程度取り戻しつつあるこの頃。
感染拡大防止対策やらマスクやらワクチンやらに関する
専門家、政治家、芸能人、ど素人の
さまざまな言説がてんこ盛りの中にあって、
それでも人々は生活し、活動し、生きているのである。
そんな逞しさを感じつつ。
コロナ談義も、
結構「不毛」なものが多いよなと思いつつ。
「毛無」山展望台にて思い巡らすのであった。
(「無毛じゃなくて毛無」おわり)