とにかくだいぶ以前には、
衛生器具にはいろんな色があった。
標準色も何色か用意されていたし
特注色もたくさんあった。
古い建物のトイレに行くと、
男子トイレの陶器は薄いブルーで
女子トイレの陶器が薄いピンクで、という
当時なら当たり前とされていた配色を
見られることがある。
また、古い古い飲み屋街の雑居ビルのトイレなんかだと
濃い群青色とか深いワインレッドとか
そんな色に出遭うことも、まだ辛うじてあるだろう。
けれども、現在はそういう景気の良い(と言っていいものか)時代ではない。
TOTOのカタログを見ても、
パブリック用陶器の色は、ホワイトとパステルアイボリーの2色のみ。
ものによってはホワイトしか無かったりする。
住宅向けには4色あって、
ホワイト、パステルアイボリー、パステルピンク、ホワイトグレー。
後者2色は受注生産品だ。
今は、陶器の色ではなくて
内装や照明などでトイレの雰囲気を作るから
陶器自体にはむしろクセが無いほうが良いのだろう。
すると、古い陶器を補修する場合、
元の色が存在しないことになる。
とある場所のトイレに、それを見た。
床置きストール小便器の
着脱式トラップが割れたか何かで
取り替えられていた。
けれども、元々の陶器の色と同じモノは
もう無い。
だから、現在入手可能なものをつけるしか無い。
機能的にはこれで問題ないし、
そもそも手に入らないんだから、仕方がない。
これがイヤなら、便器全体を取り替えることになるが
費用がずいぶん余計にかかってしまうし、
まだ使える便器ごと取り替えてしまうのは勿体ないじゃない。
まあそういうことで、
ピカピカの今風の新しいトイレも
それはそれで美しいのだけれど
年数を経て改修を経たトイレたちもまた
趣の深いものなのだ。
何事も、一期一会なのだ。
「今」を感じ、喜び、楽しむのが吉なのだ。
(「色違いだけど仕方がない」おわり)