2022年01月21日

富次さんの管

会社名に、人物の名前がつけられることも多い。

トヨタ、スズキ、ダイムラー・ベンツ、ロールス・ロイスとか。


モノの名前にも、人名が多く採用されている。

メルセデス・ベンツ、ホチキス、レオタード、ギロチン、沢庵とか。



せつびにもそういうのが少しあって、
たとえば天井内を覗くとそれが見えてきたりする。



22012101.JPG


左下の太い配管は、
塩ビ管の外側に不燃材で耐火被覆したものである。


一般名詞として「耐火二層管」と称されるけれども
古い人には「トミジ管」と呼ばれることも多い。



塩ビ管に耐火被覆したら、
鋳鉄管なんかよりも軽くて施工しやすくて安くなるんじゃね?



と言ったかどうだか、
とにかく発明して特許を取って会社を起こしたのが
樽川富次さんという方だったようである。


会社名を 東亜石綿工業(後に、株式会社トーアトミジ)
商品名を トミジ管 とした、という。


発明者の名前を取るのは、まあ、よくあることだ。
いろんな病気に発見者の名前がついていたりするが
それよりはなんかイメージ的に良い感じがする。


あまりにも普及したから、一般名詞として流通するまでになった。
国は商品名を使うわけにいかないから、
「耐火二層管」なる言葉を造語したのであろう。


22012102.JPG


結構がっちりした感じの製品だ。


最初の社名に冠されているように、
元々は耐火材としてアスベスト(石綿)含有材が使用されていた。

石綿ビニル二層管とか呼ばれていた時代のものだ。
古い建物の排水管解体の際には注意が必要な場合がある。

もちろん、アスベスト被害が顕在化して以降は
繊維混入セメントモルタルによる被覆になっている。


だから現在は全く問題はない。
少なくとも人類に知覚されている範囲では。


22012103.JPG


枝管部分にもトミジ管が使われている。

奥のほう、一部鉛管らしき部分も見える。



富次さんの起こした会社は、今世紀に入ってから倒産してしまった。

それを引き継いだ バクマ工業株式会社 も、
今年度でトミジ管の製造から 手を引く


諸行無常、なのである。



ここの天井内の製品は……。


22012104.JPG


フネンパイプ と書いてある。

フネンアクロス株式会社 の製品だ。



耐火二層管は、この会社のほかに

株式会社エーアンドエーマテリアル

昭和電工建材株式会社

などで製造されている。



業界ではすごく広まって大変有名な「トミジ」なのであるが
残念ながら一般の方々には全く知られてもいなかった。

せつび「あるある」である。
(「富次さんの管」おわり)
posted by けろ at 08:00| Comment(0) | 設備一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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