分厚いスラブに開けられた開口部に
結構な重さの蓋が乗っかっていますよ。
よっこいしょっと。
蓋を開けますよ。
そして、ちょいと中の様子を拝見しますよっと。
それにしても、重たい蓋だこと。
蒸気用の鋳鉄製放熱器が据えてあっただけのことはある。
ちょうと末端の放熱器だったんだね。
管末トラップが吊ってある。
配管の状態から言って、
一度は更新されたもののようだ。
ちょこっと錆が出ているとはいえ、
たいへん美しい状態であるからして。
新築時の配管のままだったら、
もっともっとボロボロに朽ちていたに違いないから。
見るからに、湿潤環境のピットだし。
スラブ面を見てみよう。
さすが、トイレ。
だいぶ珍しい存在になりつつある和風便器の下部が
顔をのぞかせている。
支えている鋼材は、だいぶ、だいぶ錆びている。
排水管は、たぶん何度か改修されているね。
フレキ管と塩ビ管とが接続されている。
たぶん元々は鉛管と鋳鉄管であったはずだ。
ちょいと横の方も見てみようか。
手前はループ通気管かな。
ねじ部の錆止めが、しっかり塗ってあるのがハッキリわかる。
被覆のかかった吊り棒は、比較的新しいものなのだろう。
奥の給水管かな。保温外装が朽ちて剥がれつつある。
長年の湿潤環境に耐えかねてしまったか。
奥の方には、鉛管や鋳鉄管が見える。
新築ではまずお目にかからなくなった。
地中梁? の上部から伸びている鉄筋は一体
なんじゃらほい?
こんな設計であるわけないから、
一体構造図はどうなっていることやら。
構造屋さんにご検討願おう。
別の面を見てみると。
古いの、新しいの、補修したやつ、朽ちかけたままのやつ、
などなど、いろんな状態の配管が混在している。
古い施設あるあるだ。
設備大規模改修か何かで一気に全部更新する場合もあるだろうけれど
なかなかそういうのは難しいから。
何度手間にもなってしまうけれど、
給水管のみ改修とか、暖房管のみ改修とか、
予算やら何やらの都合を見ながら
なんとかかんとかやっていくしかない事情も多かろう。
左側には、ずいぶんゴッツい鋼材が吊られている。
これは……。
伸縮継手用の固定架台なのだ。
複式の伸縮継手本体を、ここで固定している。
これに接続されている配管の右側、左側にずっと伸びた先で
配管が固定されているはずだ。
内部流体の温度が大きく変化する金属管の場合、
温度変化によって伸縮してしまうから
それをこの継手で吸収する。
それなりにゴッツく、それなりに費用がかかるから
結構省略されてエルボ返しなんかでお茶を濁されることも
少なくないけれど。
この施設では、しっかり使ってあるのであった。
撮影するアングルによっては、
なかなかにぎやかな見た目に写るかもしれない。
新旧入り乱れたごちゃごちゃ感が、
美しくはないだろうか!?
ピット内のブロック壁が一部壊してあるのは
なぜでしょう。
何のためでしょう。
ピット内には、こんな不思議も隠れ潜んでいる。
お、これはだいぶ新しめの排水管だ。
低位ドルゴがついているもん。
少なくともこれが発売されるようになって以降の
施工なのだから。
ピット内にある程度の気積があれば、
たぶん大丈夫だよね?
床点検口も密封蓋ばかりじゃないだろうし。
どうだろう?
それにしても。
「完成図」とは、全然違うね。
改修履歴がちゃんと図示されているようなこともないし。
だから、調査が必要なんだ。本来は。
「調査なんて要らないから。既存図を信用して図面描いて」
そういう依頼もまた、
すごく多いんだけど。
だから、現場の設備屋さんは、
たいへんなんだ。
申し訳ないとは思うんだけどね。
「設備設計」には、
あんまりカネをかけたくないっていうんだから、
文句はそう言う立場の人に言ってほしいな。
(「年季の入ったピット配管たち」おわり)