2021年12月30日

ガラリは目立つが役に立つ

ガラリ。


その無粋な音韻。


英語読み風に呼ぶなら「ギャラリー」なのであるが
なぜかなぜか、「ガラリ」と称されるモノ。



床壁天井で覆われた建物には
どうしても換気が必要である。


しかし、すべての室に十分な面積の窓を配置することはできない。


そうしようとすれば、自ずとベルサイユ宮殿のような
昔の兵舎のような、
そんな造りになってしまうのだが
現代社会がそんな造りの建物ばかりで済むわけもなく。



したがって機械を使用して強制的に換気を行うことになるのであって
外界と屋内との空気の流通を行うための開口部が
必須となるのである。



その部分に、雨や雪をしのぐためのルーバーをつけたものが
「ガラリ」なのである。



建物の規模が大きくなればなるほど、
換気風量もまた大きくなる。

すると、通気口としてのガラリの開口面積もまた
大きくなるのだ。



そして大きなガラリは、大層目立つものである。


目立つから、目立たない場所に、たとえば建物の裏側とか側面とか
そういうところに配置される。


そう配置されるのだが、なにせ大きいのであるから
やっぱり目立つことになる。


21123001.JPG


しかし、だ。


これだけの開口面積が必要だからついているのであって
無意味なものではないのだ。


いやむしろこれが無ければ、呼吸をする人間が利用するために
建物として存在が許されないのであるから
目立とうが目立つまいが、そもそもそういう次元の話ではないのだ。



目立つけれども、役に立つ。


そういうものなのだ。



だから、大きな建物になればなるほど、
こういう存在が必須であることを認識した上で
それをどこに配するか、
どのように見せるか、または見せないか、
「意匠的に」検討・設計する技術を要するのである。



間違っても「設備屋が勝手に考えて勝手に付けやがった」
そんなふうに考えないことだ。


絶対に必要なものに関して、考えなかったアナタの落ち度だよ。


そう反論されても、仕方がないのだ。



昔の建築を見てみると良い。

建築基準法上「建築設備」と定義されている煙突であるが、
各室の暖房(暖炉)に必須であるから
工夫を凝らしてデザインされているではないか。

1階の室でも2階の室でも利用できるように、
平面計画に合わせて
垂直方向の煙突もしっかり計画されているではないか。


「煙突屋が勝手に考えて勝手に付けやがった」
そういう建物もあるだろうけれど、
そうじゃない、しっかり計画された建物こそ
機能を意匠に上手にとりこんだ良いモノなのではないか。



というわけで、大きなガラリの計画も
意匠設計にとって、立面計画にとって
大切な要素なんだということを主張しておきたいのである。
(「ガラリは目立つが役に立つ」おわり)
posted by けろ at 08:00| Comment(0) | 換気設備 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする