近隣の他の建物を上から見ることができる。
そんな観察が、結構好きである。
設備に関する仕事をしている者としての矜持であって、
「観察家」としての活動の一環でもあるのであって、
決して、決して覗き趣味なんかじゃないってことは
口を酸っぱくして言っておきたい!
まあそれはともかく。
やはり、窓からちょっと外を見る。
右側には、平屋建物の屋根面が見える。
鋼板屋根の勾配が中央に向かってつけられている。
周囲に建物が密集しているから、
片流れ屋根にしてしまうわけにもいかないのだろう。
雨樋で受ければいいんじゃない?
たしかに雨であればそれでいいんだけれども
雪が降る地域ではそうもいかない。
この屋根面積分の雪の重みがかかったら
雨樋なんてすぐにぶっ壊れてしまう。
だから、雪はひと冬屋根の上に乗っけたままにする。
それだけの積雪荷重に耐えられるよう、
構造計算がおこなわれ。少なくとも新しい建物は。
(古いやつは……わからん)
想定以上の積雪があったら、雪下ろしをしないと
潰れるかもしれない。
屋根中央の溝部分には、おそらくヒーターが入っていて
製氷皿になることを防いでいるのだが
決して屋根面の雪全部を溶かすことを目的としていない。
溝がぶっ壊れたり、
雨水管内が氷柱となって破裂するのを避けるのが主眼である。
煙突が生えているということは、
煙突式のストーブを使っているのだろう。
もしくは、建てた当時は使っていたのだろう。
今だったら、FF式のストーブとか、
あるいは寒冷地用の暖房強化型エアコンに
置き換えられている可能性も高い。
よく見ると、煙突の根元部分の屋根鉄板が立ち上げてある。
「雪割り」といって、雪の荷重が煙突にかからないように
左右に分ける細工なのである。
これが無いと、雪、もとい、元雪である氷塊によって
煙突が折れてしまう危険性があるから。
何かのケーブルの引込柱がわりにも使われているようだから
折れてもらっては困るのだ。
じつは本日の主目的は、この建物ではない。
左の白っぽい建物との間の「隙間」である。
左の建物の外壁面も、
換気フードやら冷媒管用のカバーやら、
いろいろ見どころはあるのだけれども。
隙間には、何が見えるだろうか?
暗いから、ピントがうまく合わない。
外壁の換気フードのほか、
エアコンの室外機とか
プロパンボンベとか
何かのダクトが見えないだろうか?
裏方が、好きなんだよね。
表舞台で、きらびやかなスポットライトを浴びて輝くひとたちも
それはそれで素敵なんだろうけれども
裏でそれを支えている人々、
その人達無しでは実現しない表舞台を作り上げている
名もない人たちにこそ、目を向けていたいんだよね。
たぶん称賛もされないし、待遇も良くはない。
でも確かに、裏方あってこその表舞台のはずなのだ。
なんか、「せつび」に通じるモノがある気がするんだよね。
近年になって、省エネとか環境とか叫ばれるようになってから
表舞台に引っ張り出されるような機会も出てはきたけれど
やっぱり裏方だよね、設備は。
「建築家」に対抗して作られたのであろう
「建築設備家」なんていう呼称も
あまり知られているとは言えない。
影の稼業は、世間一般には知られないものなのだよ。
ああ、「隙間」から逸れてしまった。
続きを見なくっちゃ。
雑然とした中に、
なんかゴミに埋もれたように据えられている
設備機器たち。
このバルクタンクにLPGを補給するためには
どこかからホースを伸ばして来なくちゃならないね。
でも裏口側から届くんだろうね。
届かないところに据えるはずはないからね。
あの室外機は、たぶん、ノーメンテだね。
冬の屋上からのの雪庇爆弾に耐えて
今日まで生き残ってきたんだろうね。
影になる場所だから、
夏は日射の影響を避けて
比較的快適に働けるのかもしれない。
風のない日は熱がこもるかもしれないけど。
こんな感じで、
隙間にもいろんな「せつび」が置かれている。隠されている。
むしろ、隙間だからこそ、置き場の無い、行き場のない、
意匠屋さんの目線から隠して欲しがられる、
そんな設備類がひしめき合う場所として
利用される。
そこで、裏方として、表舞台の人々を
支えているのである。
そういう尊い方々は、たくさんおられるけれど、
ワタクシもそうなんだ、と言うつもりはない。
というか、言えた義理じゃない。
そこは残念だけれども仕方がない。
積み上げてきた努力の違いは
如何ともし難いのであるからして。
ま、せめてこれから、ボチボチやるしかありませんな。
(「隙間にも・隙間にこそ」おわり)