でも、水は必要なのだから、何とかしなくちゃ。
「何とか」って言ったって、
どこかから汲んでくるか、井戸を掘るかしかないわけで。
お、井戸があったね。
もちろん、時代劇に出てくるような
つるべで汲む井戸じゃぁない。
深井戸用と書いてある、ポンプで汲み上げる
そういう「井戸」だ。
水量や水質の条件さえ悪くなければ、
井戸だって使うことができるのだ。
開けてみある。
まあ、普段の用は、盤表面に出ているボタン類で
操作するだけで事足りるのであって、
中を開けてみる必要性はあんまり無い。
何か問題があったりメンテナンスや改修する際に
ブレーカーを落とすときくらいか。
あとは、たいていこのような盤の中には
図面などが押し込めてあるから
それを見るときかな。
ほら、左っかわに折って挟んであるでしょ?
盤には、こんな表示もついている。
メーカーの仕様が書かれているやつ。
工事名とか施工者名とか、そういうプレートが
取り付けてある場合だってある。
井戸で汲んだ水は、一度受水槽に貯めてあった。
パネルタンクじゃなくて、一体形のやつ。
井戸の水量が今ひとつだったり、
状況に応じて給水したかったり、
そんな際に設けることもあろう。
この受水槽、下部に給水ポンプが押し込んであるやつ。
水槽の六面点検も兼ねて上げてある架台部分に
ポンプも押し込めてあるから、スペースは節約されている。
ポンプ2台、アキュムレータータンク、制御盤が一体となった
ユニット形の給水ポンプだ。
非常にコンパクトになっている。
さっきの負荷井戸ポンプ制御盤の中に入っていたのは
これだった。
なんと。
井戸ポンプの図面じゃなくて、
受水槽一体形給水ユニットの図面だった。
ポンプの性能曲線や
制御盤(井戸ポンプじゃなくて給水ポンプのほうの)の
仕様書なんかも一緒だった。
んんん。
井戸ポンプの情報は、無いんかい。
新築の時には、設備設計図や計算書をはじめ、
機器類の納入仕様書やら取扱説明書やら
さまざまな情報が建物本体とともに引き渡されるのであるが
いざ何か改修しようとなると、
たいていその類のモノは無くなってしまっている。
まあきっと捨てたわけじゃなくて
どこかにあるんだろうけれども
行方不明になっていることが多い。
民間建築だけではなくて、
公共建築であったとしても。
なんでだろ〜。
役所によっては、「10年後に廃棄」という
恐ろしい表示の箱に入っていたりする。
この建物、10年しか使わんつもりかね?
むしろ長寿命化を図って、50年も60年も
使いたいんじゃなかったっけ?
なのに図面以外の資料(計算書とか技術資料とか)は
すぐに廃棄しちゃって大丈夫なの?
大丈夫なわけ、ないじゃん。
だから、改修計画の際に困ってるんだけど。
なぁんて、ちょっとしたトラウマが蘇ってきてしまったよ。
井戸ポンプ制御盤の中に隠されていた
給水ポンプの資料。
一種、宝探しみたいなもんだね。
(「受水槽付のポンプ」おわり)