2021年12月15日

独り在る冷却塔は

脈絡なく、建物から離れた空き地に、
それは在った。


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配管も、電源も、繋がっていない。

だから、何の機能も果たせない。

「冷却塔」としての役目を果たすべく
この世に送り出されてきたにもかかわらず……。



独り、何を想う?



ただの機械だからさ、何も思いはしないのだけれどね。



でもヒトって不思議なもので、
こんなモノ、物体にも
感情移入しちゃったりするんだ。


自らの、或いは誰かの境遇を勝手に重ね合わせて
哀愁を、もののあはれを、諸行無常を、
痛切に、またはそこはかとなく、
感じてしまったりするものなのだ。



コイツにとっては、「独り」とか「寂しい」とか
全く無縁であって、
錆びようが強風で倒れようが雪がどっさり積もろうが
なにも感じやしない。思やしない。



じつは、人間もそんなものだったりする。



自意識過剰だと、
他人がどう思うだろうとか、
何を言われるだろうかとか、
どんなふうに見えるだろうかとか、
いちいち気になってしまうこともあるのだろうけれど
実は人間そんなにヒマじゃない。


知らない他人の事や、
知っていてもそれほど親しくもなく興味もない人物の事など
いちいち気に留めているほど観察眼が鋭いわけじゃないのだ。

一瞬「?」と思ったとしても、
次の瞬間にはすっかり忘れているくらいなものだ。



むしろ、この冷却塔のように、
たまたまワタクシは商売柄気がつくのだけれども
別の畑の方々なんて、存在にさえ気づいてもいない、
そんな程度であることが多いのだ。


あんまり、気にするもんじゃない。


気に病むもんじゃない。


Que sera sera.
(「独り在る冷却塔は」おわり)
posted by けろ at 08:00| Comment(0) | 空調設備 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする