2021年10月14日

水平区画の処理が無いではないか

仕事柄、トイレの改修工事に関わることも少なくない。



改修するからには、改修前の状況(現況)を理解する必要があって。

図面だけじゃ到底わからないから(そもそも正確じゃないのがフツーだ)
現地を実際に見ることになる。


ま、設計の元請けさん(意匠屋さん)によっては
「現地調査費用が惜しいから、既存図を前提に描いて!」
っていうリクエストもあるけれど。

ま、それはそれでコッチには責任は無いからね、と
念を押しておくだけのことだ。



で、実際に見ると、まあ、いろいろあるもんだ。



とある便所の、天井内を見る。

各階同じ場所に便所があるから、
天井内には上の階の便所用の配管が通っている。

ややこしいのは、この階の便所用の換気ダクトも通っているところかな。



21101401.JPG



すると、むむむ?


これ、ダメだよねぇ?



上の階の和風便器の陶器が、
そのまま見えているのがわかるだろうか。


21101402.JPG


ここ。



下の階で火事が起こると、
この陶器が割れて、火炎が上階に伝わってしまう。

だから、コンクリートスラブを和風便器が貫通している場合には
耐火被覆を設けるなど何らかの防火区画処理を設けなければならないのだ。

そういう決まりになっているのだ。


決まりはそうなっているのに、
現場はそうなっていないのだ。


もっと言うなら、図面にも「耐火カバー共」って書いてあったりするのに
現地では、「無い」。


工事監理、何やってんねんっ!



なんて。


意匠屋さんが、そこまで監理してることは珍しいんじゃないかな。
昔になるほど。



他の部分は……


21101403.JPG


当然、無い。やってない。

やるなら全部やってるはず。
やってないなら、たぶん全部やってないんだ。



おお、もっとスゴいとこあった。


21101404.JPG


穴埋めさえ、してないよ。



ただの開口になってる。

コンクリで便器を支えられないからって
アングルに乗っけてあるよ。


防火区画って、かなり昔からの決まりだよね?
既存不適格なんかじゃないよね?



こんなのが、ゴロゴロ発見される。



だから、現地調査は面白いのだ。



ま、面白がってるだけじゃだめだから、

「ここんところ、耐火被覆しときましょ?」

って、提案は、する。


説明も、する。


ワタクシの責任は、ここまでだ。



カネもかかる話。

あとは、建物の所有者もしくは使用者が
適宜判断すればよろし。



いろんな古い建物に調査に入ると、
ほんと、いろいろあって面白い。

面白がってちゃダメっていうんだったら
「興味深い」とでも言っておこうか。



「日本の技術はスゴい!」

「ものづくりニッポン!」

「諸外国とはレベチだぞっ!」



ま、そういうご感想もあろう。

けど、それが社会のあらゆる部分にまで
隅々まで行き届いているかというと、
決してそういうわけでもないんだな。



百聞は一見に如かず、だ。



ぜひ、機会があればいろいろ
「隠れたところ」を見てみよう。

ほとんど隠れている「せつび」なんて、
格好の材料じゃないか。



もちろん、施工の確実さに、美しさに息を呑む現場もあるのだ。


そういうものにお目にかかると、
ホント眼福なのである。


美人もいいかもしれないけれど、
美せつびも、いいよ!
(「水平区画の処理が無いではないか」おわり)
posted by けろ at 08:00| Comment(0) | 設備一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする