雨風をしのぎ、
日射を遮り、もしくは取り入れ、
断熱材によって、熱の出入りを緩和して
主として人間が過ごしやすいように
外界から室内を遮断するための存在である。
これらの機能を果たすために、
コンクリートあるいはボードが屹立し、
適度に窓ガラスが配置され、
防雨、防湿の措置が取られ、
断熱材が、近年であればかなり厳重に施工される。
「ケンチク」的には以上がすべて、なのかもしれない。
しかし、室内環境を整えて快適に過ごせるようにするには
「せつび」の出番が必要となるのだ。
室内の温度が快適範囲から外れているのならば、
暖め、あるいは冷やす。
現象としては、どこからか室内に熱エネルギーを運んでくる、
もしくは室内の熱エネルギーをどこかに捨ててくる、
そういう事になる。
湿度が不快域にあるのであれば
加湿し、あるいは除湿する。
室内空気中に水分子を気体の形で補給するように
さまざまな方式による加湿装置を設け、
あるいは余計な水分子を除去すべく、
排気、吸着などの手段を講じる。
臭気、二酸化炭素濃度、粉塵濃度に不都合があるならば
換気という手段により空気そのものを入れ換え、
もしくは浄化して、それらを許容範囲内に収めるようにする。
これらの機能を果たすために、
外壁を貫く、さまざまな「せつび」が存在していて、
熱を、物質を、空気を、
さまざまな方法によって運搬している。
とある施設の外壁。
窓の上に並ぶ丸い板は、
換気口に設けられた防風板である。
目視でその別を判定しづらくはあるが、
給気口あるいは排気口として、
外界と室内との空気をやり取りするための貫通孔である。
窓と窓との間の下部には
おそらくFF式温風暖房機用と考えられる
給排気トップが並ぶ。
室内空気質調整のための換気に資する孔ではなくて、
燃焼式暖房機用の燃焼空気を取り入れ、
燃焼後の廃ガスを排出するための孔である。
あの小さな部材のうちに、
外気取り入れ口と排気口とが設けられていて
しかもそれらがショートサーキットしない造りになっている。
更には、壁掛で並ぶ、エアコンの室外機。
室内に設置されている室内機とセットとなっていて、
それらの間を、HFC冷媒用の配管で接続してある。
室内を暖房する際には、
屋外空気中の熱エネルギーをこの室外機にて回収し
室内に送り込む。
寒い、冷たい外気から更に熱を搾り取って、
外よりは暖かいであろう室内を更に暖めようとする。
熱を低いところから高いところに運ぶので
「ヒートポンプ」と呼ばれる。
冷房の際には逆で、
室内の余計な熱エネルギーを冷媒で回収して屋外に運び
大気中に捨てる働きをする。
「こういう換気フードを、見せたくないんだ」
「室外機を並べちゃったらみっともない」
そう考えるなら、室内と屋外とを結ぶシステムを変えて
外壁に並ばないような方式にしなくてはならない。
あるいは、屋上へ。
あるいは、裏面へ。
あるいは、少し離れた換気塔へ。
もしくは、空気熱源ではなくて、
水熱源のヒートポンプにするとか。
外壁に、何らの「せつび」も見えないとすると、
それらは別の場所で、別の形で屋外と室内とを連絡している。
当然、費用は余計にかかるのだから、
建設費を安く上げたいなら、目につく設備が並ぶようになるし、
カネに糸目をつけなければ、それらが目につかないようにもできる。
設備の沙汰も、金次第なのである。
(「外壁に並ぶ設備は必要なのか」おわり)