標準軌の電車が走る。
最大勾配が80‰にもなるという、
とんでもない傾斜を登っていく鉄道である。
1,000m進むと、高低差が80mにもなるのである。
全長14.66mの車両1両の前後で、1.17mの差がついてしまう。
乗っている間中、ずっとナナメなのである。
それでも解消しきれない高低差があるために、
この鉄道にはスイッチバックが設けられている。
出山信号場と、大平台駅と、上大平台信号場の3ヶ所である。
路線は単線であるため、
ダイヤにもよるけれど、
信号場で一旦停止している間に
上り・下りの列車のすれ違いも行う。
大平台駅も、スイッチバック&行き違いの拠点である。
異なるタイプの車両が並んだ。
当然、どちら向きの線路も行き止まりである。
駅を出ると、上り・下りそれぞれに分かれる。
とにかくカーブがキツイのがわかるだろうか。
もちろん、見るからに勾配がついているのも、
わかるだろう。
スイッチバック以外にもすれ違うための信号場がある。
鉄道線最上部、強羅駅の端部。
更に上に向かうには、
ここで鉄道線を降りて
鋼索線(ケーブルカー)に乗り換える。
ここからは更に急勾配になるので
もはや自走式の鉄道での登坂は不可能になるのだ。
いろんな乗り物がたくさんあって、
子どもたち(もちろん大人も)の心をくすぐる
都心からほど近い異世界、
それが箱根。
春になって、
緊急事態宣言が明けて、
コロナ禍の動向に一定の光明が見えてきた頃、
足を伸ばしてみてはいかがであろうか。
(「スイッチバック式の鉄道」おわり)