そうだ。呼吸しているのだ。
ただのハコだったら、呼吸は不要なんだけれども
その中に人間がいるならば、
換気がおこなわれる必要がある。
だから「呼吸」している。
窓があれば、
それを開ければ、呼吸は可能である。
だから、それで済ませている建物も多いけれども
ある程度大きな建物になると
「窓を介しての呼吸」だけでは不足する。
そもそも、窓がない部屋だって、たくさんできてしまう。
だから、人為的に、機械的に、
「呼吸」をつくりだす。
ファン(送風機)を使って、
ダクト(風道)でつないで、
外の空気を建物内へ、
建物内の空気を外へ、運ぶのだ。
それが「換気」なのである。
「呼吸」というのは、「呼」と「吸」とが対になっている。
建物の中に給気をすれば、
どこかから排気がなされなければならない。
そうでなければ、建物内の気圧が無限に高くなってしまうだろう。
逆に、建物から排気をするならば、
必ずどこかから給気がなされるはずなのである。
そうでなければ、建物内は真空になってしまう。
まあ、給気・排気どちらの場合でも
建物の気密性はそこまで高くはないから、
無限に高い気圧や、真空状態になってしまうことは無い。
ドアの開閉が重くなったり、
ドアや窓の隙間がピューピュー鳴くくらいなものだ。
でもそれは結構不便・不快なものなので、
計画的に換気(給・排気)することは
大切なのである。
さてここに、とある建物の屋上がある。
その外壁面に、格子がついている。
ギョーカイでは、「ガラリ」と呼ぶ。
英語風に書けば、「ギャラリー」ということなんだろうけれど、
「ガラリ」と呼び倣わされている。
大きいのと、小さいのと。
これが給気に使われているのか、排気に使われているのか、
見ただけでは判然としないけれど、
とにかく建物内と外気との連絡口には違いない。
どんな建物にも「正面」というものがあって、
その部分は意匠的にはある程度気を遣う。
だから、このようなガラリは、
正面を避けて設けられることが多い。
屋上の塔屋壁面であれば、
角度や方向にもよるだろうけれど
下からは見えなかったりするから
大きなガラリを設けるのに好都合だ。
まあ、このように屋上に上がってしまえば
デデンとあるのが丸見えではあるけれど。
そして、給気か排気かの音が
ゴォゴォ聞こえてくるのだけれど。
デパートとか、ショッピングモールとか、
屋上にも上がれる大型の建物に行ったら
探してみてほしい。
どんな大きなガラリがあるだろうか。
いったい、合計何uくらいのガラリが設けられているだろうか。
建物規模が大きくなれば大きくなるほど、
呼吸(換気)量が多くなるから、
ガラリの面積もたくさん必要になる。
そのへんの面積感覚がわかってくれば、
意匠設計上も役立つに違いない。
実施設計が進んだ段階で、
「そんなでっかいガラリが必要だなんて
思ってもみなかった」
なんていう『想定外』に見舞われることは
なくなるのである。
(「屋上にある、大きなガラリ」おわり)