かつては、非常に栄えた街である。
現在は主に観光地として名を馳せているのであるが
商業・貿易・金融・交通の要衝として、栄えていた時期があるのだ。
「北のウォール街」と呼ばれ、
都市銀行の支店が軒を連ねていた時代があったのだ。
旧三井銀行小樽支店 は、その雰囲気を味わうことの出来る施設の一つである。
重厚な造りが、財閥銀行の威厳を誇るかのようである。
昭和2年築の、SRC造建築物。
平成14年まで、実際の店舗として使用されていたという。
裏手の増築部分は、とたんに重厚感のないただの建物感あふれる
様相になるのだけれど。
内部のホール。
これを、SRCの架構で実現している。
この特徴的な天井仕上げを利用して
プロジェクションマッピングが披露される。
入館料だけで見られる。
立って見ていると首が痛くなるので
ちゃんと椅子が用意されている。
ヨーロッパから運んできたステンドグラスも展示されている。
旗竿取付金物の一部が残されているそうで
その図面があるそうで、
昭和の始め、もちろんCADなど無い時代、
ちゃんと「圖學」を学ばないと
とても描けたもんじゃなかっただろう。
鉄骨建方の写真が残されている。
重機の無い時代の施工。
想像もつかない。
建築概要書が、興味深い。
水洗トイレ、なのである。
拡大パネルもあって、
現在の建築概要書の先祖だ。
設備(「附帯設備」となっている)の部分を
拡大すると、
配線工事ハ隠蔽コンヂツト式
ス井ツチ
高サ十一尺ブロンズ製大スタンド
電鈴装置ヲ設ク
低壓蒸汽直接煖房式
米國アメリカンラヂヱーター會社製アイデアル、スモークレス汽罐
同社製ピヤレス型放熱器
外氣温度華氏五度ノ場合各室華氏六十五度乃至六十度に煖房スルモノトス
空氣清浄器付ヱイロフインヒーター装置
湯は局部的に瓦斯ヒーターヲ使用して供給ス
各衛生配管ハ夜間水ヲ抜き其氷結ヲ防グモノトス
……ナカナカ、趣深キモノト思ヰマセンカ?
地下の金庫室。
左上にある小扉は、「人孔」である。
こういうものが有るということは、
かつて、世界のどこかで、閉じ込められてエライ目に遭った人が
いたということなのだろう。
どんな目であったかは、知らねども。
2階回廊は、営業室ホールに面している。
その回廊に沿って、応接室、会議室などの各室が並んでいる。
当時の「設計」とは、
ずいぶん範囲が広かったものだと思うのである。
小樽市内に銀行が25もあったというのだから
相当なものである。
似鳥美術館、旧三井銀行小樽支店、ステンドグラス美術館をまとめて
「小樽芸術村」 と称している。
時間がゆるすなら、
3館共通券 で全部観るのがよかろう。
銀行の支店として営業していたカウンターには、
多くの化石も見られる。
あんまりうまく撮せなかったのだけれど。
これらを探すだけでも、観る価値があるんじゃないかな。
(「旧三井銀行小樽支店」おわり)