そういうものだけが現代に残されている、というべきか。
味も素っ気もない古い建物はただみすぼらしいだけだから
取り壊され、建て替えられてしまうのだろう。
さて。
味のある建物は、壊すに忍びない。
また、何らかの文化財指定が行われて
おいそれとは解体できない場合もあろう。
すると、内外装の補修、耐震措置のほかに
設備的な手入れがどうしても必要になる。
古い建物ほど、
当時の設備システムじゃ、現代の使用に耐えないから。
時代を経た建物ほど、
何度も何度も、設備改修が繰り返されて
現在の姿となる。
ある、美術館の建物。
元々は、銀行であったという。
後に、ホテルであった時期もあり、
現在は美術館なのだという。
大きく用途が変わっているのだから、
いろんな建築・消防関連法規に適合させるべく、
また、それぞれの用途の目的に適うように、
設備改修が再三行われたに違いない。
この煙突自体は、元々のものを補強・化粧して
利用しているのだろうか。
もしくは、もう煙突としての機能は使われていないのか。
窓は、空気の取入口・排出口として利用されている。
現代は、機械換気をしなくてはならないから。
また、長いダクトが、非常階段に沿って立ち上げられている。
どうしても、必要だったんだろう。
いずれにしても、建物の裏手に、この類のモノは設置される。
せっかくの歴史的建築物のファザードに
これらのものを現すわけにはいかないから。
地上に並ぶ、室外機たち。
外気処理も、空調も、
空気熱源ヒートポンプパッケージ形空気調和機によっていることが
わかる。
寒冷地ゆえ、外気処理の主目的は
冬期導入外気の加熱、ということになろうか。
その隣には、
ガスヒートポンプの室外機が並ぶ。
階ごとのマルチシステムにしてあるようだ。
降雪があるため、
防雪フードが取り付けられている。
また、積雪に備えて、
ある程度の高さの基礎に乗せてある。
基礎と基礎の間に、誰かが潜り込まないように?
こういうガードが取り付けてあるのは、
あまり見たことがなかった。
このガスヒーポン(GHP)、
パナソニック製である。
元々は、三洋電機。
「SANYO」の表示も、
すっかり見かけなくなった。
新築の建物の設備ももちろんおもしろいのだが、
明治期・大正期の古い建物に後から後から追加された設備には
新築とは異なる面白さがある。
なぜ、このシステムを選んだんだろう。
なぜ、この機種を選んだんだろう。
どうして、こうなっちゃった?
おお、なんとうまく据えたことだろう。
いろんな感動が、そこにある。
美術館は美術館で、大層良いのであるが、
建物自体にも、非常に興味をそそられたのであった。
(「古い建物を利用するなら」おわり)