2020年03月25日

鉛管と鋳鉄管の記憶として

トイレを全面改修している。


古い古〜い昔ながらのトイレが
新しくされるのだ。


壁を壊し、天井を落とし、内装がすべて取り払われると
配管たちが顕になってくる。


今まで日の目を見ることのなかった数々の配管たちが
その姿を現す。

しかし、もう二度と働きに就くことはない。

これから解体され、分別され、処分されるのだ。


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白い管、黒い管、いろいろある。


白いのは、雑排水用の「配管用炭素鋼鋼管(白)」である。

上方に、ループ通気管として分岐している部分もある。




黒いのは、汚水管用の鋳鉄管である。

重いのだ。


だから?

たわんでしまっているのがわかる。


ほんとうは、たわんでしまわないように、
継手部分の近くでしっかりと吊らなくちゃならないんだが。

吊り棒が斜めになったりして、こんなになっている。



最初からだったとしたら、施工不良でしかない。

長年使用している中で、幾度もの地震動などを経るうちに
期せずしてこうなってしまったのだとしたら、
まあそれは仕方ないかな。

老化みたいなもので。


もっとも、現在の施工のように「形鋼振止め支持」を
適切におこなっていれば、そういうことも避けられた
かもしれない。


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白い管は、ねじ込みで繋げられていて、
黒い管は、ボルトナット締めで。



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黒い管に、ねずみ色の管が、ぐにゃりとつながっている。

衛生器具のトラップではなくて、
床下部分に別にトラップを設けているのだ。


こういうものを使う場合には、
上にある衛生器具は「トラップなし」のタイプを使う。


そうじゃないと、二重トラップになって
水の流れがすこぶる悪くなる。



そこから先、ナナメに何となく曲げられているのが
「鉛管」である。


文字通り、鉛で出来た管で、
自在に曲げることが出来たから(それにも技能を要するが)
器具排水を排水主管につなげる際に
使われていた。


過去形だ。

今は、こんなモノは使うことはまずない。


とにかく、重い。鉛の塊だから。

そして、高い。


加工が難しい。熟練を要する。

中に砂を詰めて、小槌で叩きながら曲げていくという
文字通りの職人技が必要となるのだが、
果たして現代、これが出来る方は
どのくらいご存命であろうか?


更には、有害物でもある。



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鋳鉄管も、
まず使われなくなった。

重いし、高価だし、施工も面倒だ。



今は、もっと軽くて、安価で、施工も比較的容易になった材料が
いろいろあるのだ。

だから、そちらに移行してしまった。



古いトイレがこの世を去るとともに、
鋳鉄管や鉛管は、徐々にその姿を消していくのである。


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だからせめて、画像として残しておこうかな、というわけで
撮っている。


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これを作った人たちには、
それぞれの学業時代があり、
修行を経ての職業人生があり、
またそれぞれに懇意の人物や、家庭があり。

各々、唯一無二の歴史を刻んできているのである。



……とか、いささか感傷的になってしまうじゃないか。



そんな、鋳鉄管たち、鉛管たちを偲び、
記録している。


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何度か改修を経ているから、
途中で給水管は亜鉛メッキ鋼管から塩ビライニング鋼管に
交換されたようである。

水色の継手が、それを示している。



たいてい、便所のパイプシャフト付近は配管が入り組んでいて、
決まりモノの継手を駆使して、
直管の長さの調節だけでつないでいくのは
なかなかに大変なことなのだ。


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1本1本がこうやってつながるために、
それぞれのドラマがあったに違いないのだ!



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というわけで、名残を惜しみつつ
解体を見送るのである。



鋳鉄管と鉛管。



もはや、産業遺産である。
(「鉛管と鋳鉄管の記憶として」おわり)
posted by けろ at 08:00| Comment(0) | 衛生設備 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする